《政府の提案理由説明》
無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律案提案理由説明
無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律案につきまして、その趣旨をご説明いたします。
我が国社会においては、平成六年、七年に、毒性物質であるサリンを使用してのいわゆる松本サリン事件及び地下鉄サリン事件が相次いで発生し、不特定多数の者の生命身体に対し極めて甚大な被害をもたらしたことは記憶に新しいところであります。
最近の国際情勢をみても、多数の死傷者を出した平成十年八月のケニア・タンザニアにおける米国大使館同時縛は事件に代表されるように、公共の場所で爆弾を爆発させるなどして多くの一般市民を犠牲にする無差別大量殺人事件が多発しております。
このように、無差別大量殺人行為は、平穏な市民生活にとって重大な脅威となる上、これを団体が行う場合には、秘密裏に計画準備されて実行に移されるため犯行の事前把握が極めて困難であることなどから、犯行の実現可能性も高く、また、団体が一定の目的を達成するための手段としてこれを敢行する場合には、反覆して実行される危険性が高いのであります。
そこで、この法律案は、このような無差別大量殺人行為の特性を踏まえて、過去に無差別大量殺人行為を行った団体について、現在も危険な要素を保持していると認められる場合に、迅速かつ適切にたいしょするため、必要な法整備を図ろうとするものであります。 次に、この法律案の主要点についてご説明申し上げます。
第一は、過去に団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体であって、現在も危険な要素を保持している団体を適用対象とするものであります。
第二は、公安審査委員会が、対象団体について、その活動状況を継続して明らかにする必要があると認められた場合、一定期間、公安調査庁長官の観察に付し、公安調査庁長官が当該団体から一定の事項について定期の報告を受けるとともに、必要に応じ当該団体が所有し又は管理する土地又は建物への立入検査を行い得る観察処分の制度を設けるものであります。
第三は、公安審査委員会が、対象団体について、無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の増大を防止する必要があると認めた場合、又は、第二の観察処分に付された団体につき、不報告又は立入検査妨害等があり、無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難であると認めた場合、一定期間、土地又は建物の新規取得の禁止、既存の土地又は建物の使用禁止、無差別大量殺人行為の関与者等に一定の団体の活動に参加させる事の禁止、加入強要、脱退妨害の禁止、金品等の贈与を受けることの禁止等の処分を行い得る再発防止処分の制度を設けるものであります。
第四は、観察処分及び再発防止処分の判断手続を迅速に行い得るようにするための手続規定を設けるものであります。
第五は、政府が、毎年一回、国会に対し、この法律の施行状況を報告することとするとともに、公安調査庁長官が関係地方公共団体の請求により、観察処分に基づく調査の結果得られた情報について、個人の秘密等を害するおそれがある事項を除き、提供できることとするものであります。
第六は、本法案による規制をより実効性あるものとするため、警察当局との協力関係につき、所要の措置を講じるものであります。
第七は、規制の実効性を担保するため、立入検査妨害及び再発防止処分に伴う役職員又は構成員等の禁止行為違反等につき、所要の罰則を設けるものであります。
以上が法律案の要旨であります。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決下さいますようお願いいたします。
《オウム真理教対策関連二法案の概要》
(今回ここで話題にしている団体規制法案と、御参考までに、
二法案のもう一方である被害者救済法案の双方を掲載します)
平成11年10日27日
無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律案(仮称)の概要
1 (目的)
「団体の活動として役職員又は構成員が無差別大量殺人行為を行った団体につき、その活動状況を明らかにし又は当該無差別大量殺人行為の再発を防止するために必要な規制措置を定め、もって公共の安全の確保に寄与すること」を目的とするものとする。
2 (対象団体)
次の2要件をいずれも充たす団体を対象とするものとする。
(1) 過去に団体の活動として無差別大量殺人行為(破壊活動防止法4条1項2号ヘに掲げる暴力主義的破壊活動(政治目的殺人)であって、不特定かつ多数の者を殺害し、又はその実行に着手してこれを遂げないもの)を実行した団体であること。
(2) 次のいずれかに該当すること。
(1) 当該無差別大量殺人行為の首謀者が現在も当該団体の活動に影響力を有していること
(2) 当該無差別大量殺人行為の関与者の全部又は一部が現在も当該団体の役職員又は構成員であること
(3) 当該無差別大量殺人行為時に役員であった者の全部又は一部が現在も当該団体の役員であること
(4) 当該団体が殺人をしょうようする綱領を保持していること
(5) その他当該団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があること
3 (観察処分)
(1)公安審査委員会は、2の対象団体について、その活動状況を継続して明らかにする必要があると認められるときは、公安調査庁長官の請求により、3年を超えない期間を定めて当該団体を同長官の観察に付する処分をすることができるものとする。
(2) 観察処分がなされた場合、公安調査庁長官は、観察の実施の一環として、当該団体に対し、役職員の氏名・住所、団体の活動の用に供されている土地・建物の所在・規模・用途及び団体の資産・負債等につき、3か月ごとの報告徴取を行うとともに、当該団体の活動状況を明らかにするため特に必要があると認められるときは、団体の所有し又は管理する施設への立入検査を行うことができるものとする。
4 (再発防止処分)
公安審査委員会は、次の(1)の(1)(2)の要件のいずれか一があるときは、公安調査庁長官の請求により、6月を超えない期間を定めて、次の(2)に掲げる処分の全部又は一部を行うことができるものとする。
(1) 要件((1)又は(2))
(1) 2の対象団体につき、当該団体の役職員又は構成員が団体の活動として
ア)人を殺害し若しくは殺害しようとしているとき、人の身体を傷害し若しくは傷害しようとしているとき又は人に暴行を加え若しくは加えようとしているとき
イ)人を略取し若しくは略取しようとしているとき又は人を誘拐し若しくは誘拐しようとしているとき
ウ)人を監禁し又は監禁しようとしているとき
エ)爆発物若しくは銃砲等を保有し若しくは保有しようとしているとき又はこれらの製造に用いられる設備を保有し若しくは保有しようとしているとき
オ)団体への加入を強要し若しくは強要しようとしているとき又は団体からの脱退を妨害し若しくは妨害しようとしているとき
カ)殺人をしょうようする綱領に従って役職員又は構成員に対する指導を行い又は行おうとしているとき
キ)構成員の総数又は土地、建物、設備その他資産を急激に増加させ又は増加させようとしているとき
ク)その他当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の増大を防止する必要があるとき
(2) 2の対象団体が3の観察処分を受けた場合において、不報告・立入検査妨害等があり、当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難であるとき
(2) 処分
(1) 土地・建物の新規取得・借受けの禁止
(2) 特定の既存施設(専ら居住の用に供しているものを除く)の全部又は一部の使用禁止
(3) 過去の無差別大量殺人行為時の関与者又は役員に、団体の活動に供されている土地又は建物において団体の活動の全部又は一部に参加・従事させることの禁止
(4) 団体への加入強要・勧誘の禁止、団体からの脱退妨害の禁止
(5) 金品の贈与を受けることの禁止
5 (手続の迅速化)
3の観察処分及び4の再発防止処分について、公安審査委員会が行政手続法に基づく弁明の機会の付与を基礎とした意見聴取手続を行うものとし、かつ、同委員会は30日以内に決定を行うよう努めるものとする旨の規定を設ける。
6 (調査結果の提供)
公安調査庁長官は、関係地方公共団体の請求により、個人の秘密又は公共の安全を害するおそれがあると認める事項を除き、3の観察処分による報告徴取及び立入検査の結果を提供できるものとする。
7 (警察当局との協力関係)
より実効性ある規制を行うため、警察庁長官は、
(1) 必要があると認めるときは、公安調査庁長官に対し、3の観察処分又は4の再発防止処分に関し意見を述べることができ、
(2) 4の再発防止処分に係る意見を述べるため特に必要があると認められるときは、3の観察処分を受けた団体に対し、公安調査庁長官と協議の上、当該団体の所有し又は管理する施設への立入検査を行うことができるものとするなど、警察当局との協力関係につき法制上の措置をする。
8 (罰則)
規制の実効性を担保するため、再発防止処分違反(2年以下の懲役又は100万円以下)、立入検査拒否等(1年以下の懲役又は50万円以下)などにつき所要の罰則を設ける。
平成11年10月27日
特定破産法人の破産財団に属すべき財産の回復に関する特別措置法案(仮称)の概要
1 立法の必要性について
「任意団体オウム真理教」には、破産法人の破産財団に属すべき財産を密かに流出させ、それを利用して新たに不動産を取得するなどしているのではないかとの広範な疑いがある。他方で、現行法の下においても、破産法人から流出した財産の転化物については、その財産相当額を不当利得として、破産管財人が返還を請求できることになっている。しかし、オウムの場合には、いつ、いかなる財産が、誰に流出し、任意団体が有するどの財産に転化しているのかが全く分からないため、破産管財人としては、返還請求をすることができない状況にある。
そこで、破産管財人の主張・立証の困難性を緩和するための所要の規定を設ける必要がある。
2 立法の目的
破産宣告を受けた法人でその破産手続において確定した破産債権中に無差別大量殺人行為に基づく損害賠償責任があるもの(以下「特定破産法人」という。)の破産管財人による破産財団に属すべき財産の回復に関し特別の措置を定めることにより、無差別大量殺人行為によって被害を受けた者の救済に資することを目的とする。
3 対 象 者
次に掲げる者(以下「特別関係者」という。)を対象とするものとする。
(1) 新たな団体規制立法による観察処分を受けた団体で、当該処分に係る無差別大量殺人行為による損害賠償責任を特定破産法人が負担すべきもの
(2) (1)に掲げる団体の構成員
(3) (2)に掲げる者が構成員、役員又は職員の過半数を占める法人その他の団体
(4) (2)に掲げる者が発行済株式の総数の2分の1を超える株式又は出資の総額の2分
の1を超える持分を保有する法人
(5) 次に掲げる者であって、その所有する不動産が・に掲げる団体の活動の用に供さ
れているもの
ア (1)に掲げる団体の構成員であった者
イ (2)に掲げる者が構成員、役員又は職員の過半数を占めていた法人その他の団体
ウ (2)に掲げる者が発行済株式の総数の2分の1を超える株式又は出資の総額の2分
の1を超える持分を保有していた法人
〔(6) (1)に掲げる団体の構成員であった者で、その団体につき新たな団体規制立法に
よる観察処分があった後にその団体を脱退したもの〕
〔(7) (2)に掲げる者が代表者である法人その他の団体〕
4 規定の概要
(1) 特別関係者の有する財産に関する推定
特別関係者が有する財産は、特定破産法人の破産財団との関係においては、当該特
別関係者が特定破産法人から法律上の原因なく得た財産の処分に基づいて得た財産で
あって、その価額は、当該処分に係る特定破産法人の財産の価額と同額であると推定
するものとする。
(2) 特別関係者に対する否認権の行使に関する推定
(1) 特定破産法人が、損害賠償責任を負担すべき最初の無差別大量殺人行為の後に、
その財産を特別関係者に対して移転した場合には、その移転の行為は、特定破産法人
が破産債権者を害することを知っていたものと推定するものとする。
(2) 特別関係者が特定破産法人の財産の転得者である場合には、その特別関係者は、
転得の当時、それぞれその前者に対する否認の原因があることを知っていたものと推
定するものとする。
(3) 否認権の時効の特例
特定破産法人の破産管財人が特別関係者に対して否認権を行使する場合には、否認
権の消滅時効は、この法律の施行の日から起算するものとする。
(4) 破産管財人の権限
(1) 特定破産法人の破産管財人は、公安調査庁長官に対し、特別関係者に対する財産
又は不当利得の返還を請求するために必要な資料で公安調査庁が新たな規制立法によ
る処分に基づいて取得したものの提供を請求することができるものとする。
(2) 破産管財人は、(1)により得られた情報を、特別関係者に対する財産又は不当利得
の返還の請求以外の用に供してはならないものとする。
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