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朝鮮人労務者等の未払金供託に関する質問主意書
(2000年11月29日) 日朝国交正常化交渉は、平成一二年の一〇月三〇日、三一日で本交渉が一一回を数えたが、いわゆる「過去の清算」については具体的合意に達していない。「過去の清算」の具体的内容を構成するものの一つが未払金問題である。しかし、朝鮮人労務者等への未払金が各法務局に供託されたという事実は知られているが、今日に至るまでその実態はほとんど明らかにされていない。
1 旧日本製鉄株式会社総務部勤労課「朝鮮人労務者関係」(駒沢大学図書館所収)並びに広島地方法務局及び盛岡地方法務局での供託書閲覧によれば、供託書には当事者の氏名、本籍、未払金内訳等が明記された名簿が添付されているが、供託通知が送付された事実はない。 2 未払金供託は当該企業と労務者個人との債権債務関係が前提となり、供託の要件は個別具体的に検討されるべきである。しかるに、民事局長通達第五一六号では、わざわざ供託要領を示し、通知は送付する必要なしと指示している。これは、供託制度本来の趣旨に反するものである。 3 多くの朝鮮人労務者関係供託が時効を迎えた昭和三一年に法務省は例外的に時効による歳入納付を保留するよう通達を出している。一貫して法務省は朝鮮人労務者関係供託の取扱いについて各法務局を指導しており、昭和四〇年一二月二日に参議院日本国と大韓民国との間の条約及び協定に関する特別委員会において、当時の椎名悦三外務大臣が、日韓交渉過程における「資料がない」という趣旨の答弁したことは事実と異なる。 4 厚生省は請求権にかかわる厚生年金脱退手当金の支払に応じている。 朝鮮人労務者等の未払金供託に関する質問に対する答弁書一について 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百九十四条は債権者の受領不能を原因とする供託を認めており、また、同法第四百九十五条第三項は「供託者ハ遅滞ナク債権者ニ供託ノ通知ヲ為スコトヲ要ス」と定めている。お尋ねの件の供託は、債権者の住所が不明であることによる弁済金の受領不能を原因としてされたものであり、これについては右の通知をすることができないことから、供託者に民法上の通知義務は生じないと解される。なお、右の供託がされた当時に施行されていた旧供託物取扱規則(大正十一年司法省令第二号)には、供託者に供託通知書を提出させ、供託金の払込みがあると、供託官が供託通知書を債権者に発送する手続が定められていた(同令第二条第一項ただし書、第三条第三項、第三条ノ二第二項)が、これは民法上の通知義務を確実に履行させるために設けられた手続であり、民法上の通知義務が生じない場合には、当該手続は執る必要はなかったものである。
二について 昭和二十一年八月二十七日民事甲第五百十六号司法省民事局長通達は、当時の厚生省労政局長から、「朝鮮人労務者等に対する未払金その他に関する件」と題する通達(昭和二十一年十月十二日労発第五百七十二号)を地方長官に対し発出するに際して供託事務に関する部分につき照会を受け、右通達を発出しても供託事務の取扱上差し支えない旨回答したことを各供託局長に通知したものであり、法務省(当時の司法省)が何者かに対して「供託を指示した」ものではない。そもそも供託は、私法上の法律関係の当事者が必要に応じて行うものであって、供託所等が私人間の法律関係に介入し、その一方の当事者に対し指示すべき性質のものではない。
三について 供託金が、その還付請求権等の時効消滅により政府の所得に帰したときは、供託官吏の振出したる小切手にしてその振出日附後一年を経過したる場合及び供託金が政府の所得に帰したる場合の取扱方に関する件(昭和十年大蔵省令第八号)第二条の規定により準用される保管金取扱規程(大正十一年大蔵省令第五号)第十六条から第十八条までの規定により、政府の所得に帰した他の保管金と同様に歳入に納付する手続を執らなければならない。
四について 供託所においては、お尋ねの朝鮮人労働者等の未払金の弁済供託事件も通常の民事紛争に関する弁済供託事件の一つとして取り扱われており、朝鮮人労働者関係供託の数、人数、総額等は把握していない。 五について 御指摘が椎名外務大臣の答弁のいずれの部分を指すのかは必ずしも明らかではないが、同大臣の答弁の趣旨は、大韓民国の独立に伴う日本国及び大韓民国並びにそれぞれの国民の財産及び請求権に関する問題の処理に当たっては法的根拠があり、かつ、事実関係が十分に立証されたもののみを処理の対象として認めるという日韓交渉で当初考えられていた解決方法が、時間の経過及び朝鮮戦争の勃発等による資料の散逸等により実施困難であると判断するに至ったという当時の経緯を説明するところにあったものである。 六について 供託金還付請求権を含む大韓民国又はその国民の日本国又はその国民に対する債権であって、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和四十年条約第二十七号。以下「請求権協定」という。)第二条3の財産、権利及び利益に該当するものは、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等の財産権に対する措置に関する法律(昭和四十年法律第百四十四号。以下「措置法」という。)第一項の規定によって、昭和四十年六月二十二日において消滅したものとされた。
七について 憲法第二十九条は、国の一部領域の分離に伴う財産及び請求権に関する問題の処理について適用されることをおよそ予想していないものと考えられる。請求権協定の締結及び措置法の制定は、極めて高度な外交的政治的判断に基づいて、日本国及び大韓民国並びにそれぞれの国民の財産及び請求権に関する問題を完全かつ最終的に解決し、両国の国交正常化と友好関係の確立を実現するために行われたものであり、このことについては憲法第二十九条の規定の適用が問題となる余地はないものと考えられる。
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