2000年03月14日法務委員会
再審請求中の死刑執行
戦時中の未払い賃金の供託
○福島瑞穂君
社民党の福島瑞穂です。
昨年十二月十七日、二人に対して死刑の執行がなされました。佐川和男さんと小野照男さんです。佐川さんは人身保護請求の最中、そして小野照男さんは再審請求中です。
そして小野照男さんが、非常に問題だと思うのは、弁護士が十二月十三日十六時四十九分付で彼に対して電報を打っております。「再審請求書長崎地裁に発送した
風邪引かず頑張れ」、これが十二月十三日十六時四十九分に出されております。
これに対して、小野さんは心強く思ったのか、手紙を十四日に発送して十五日に届いております。
拝啓だんと忙しくなります。
師走の折り、クリスマス共に各の町々は慌ただしいことと思います。先生からの再審請求の提出のことの電報を受け取りました。有難う御座ます。追って書類を郵送致します。
毎日が地獄ですが、この厳しさには負けず頑張ります。マイペースです。私には先生又沢山の皆様や神仏の内に見守っていられると思うと勇気百倍の心境です。一層宜しくお願い致します。所内に於ける紙袋作りの作業にも増々懸命に働いています。仕事は苦になりません。頑張ります。
正月にはおだやかな元旦をお迎え下さい。又健康には特に注意をお願い致します。
合掌
俳句
・念ずれば勇気百倍年の暮
・静まりて描く仏画の年の暮
・人権の平和の祈り去年今年
弁護士宮川先生
小野照男
十二月十四日
この手紙が十四日に発送され、十五日に弁護士のところに届いております。しかし、十七日の日には死刑執行がなされました。弁護士が長崎地裁に初めて再審の書面を出し、そのことを本人に電報で伝え、本人は本当に勇気百倍、頑張りますというふうに出して、その直後に死刑の執行がされたわけです。
法務大臣の前にまず刑事局長、この再審請求が行われてこのような手続が進んでいたことは知っていたのでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君)
御指摘の方について再審請求が当時なされていたということは承知しております。
○福島瑞穂君
大臣、大臣はこのことを知っておられましたか。
○国務大臣(臼井日出男君)
個々具体的な死刑執行に関する事項については答弁を差し控えさせていただきます。
○福島瑞穂君
いや、知っていたか知らないかということを聞いているのです。大臣が知っていたか知らないかを聞いているのです。答えてください。
○国務大臣(臼井日出男君)
存じておりました。
○福島瑞穂君
大臣、これは重要なことだと思います。この人は再審請求中で、本人でやっておりました。弁護士を頼んで、弁護士が初めて裁判所に再審請求を出したわけです、書面を出したわけです。それを本人に大至急伝え、本人は頑張ると言っていたのに、その直後に死刑の執行がされる。非常に思いを残して執行されたというふうに思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(臼井日出男君)
先ほど個々の具体的な死刑執行に関する事項については答弁を差し控えさせていただくということをお話し申し上げました。
なお、一般論として申し上げるならば、再審請求は法律上刑の執行停止の事由には当たらないとされておりますが、死刑執行命令を発するに当たっては、死刑執行のもたらす重大な結果にかんがみまして、再審請求された事由につき十分参酌することといたしているところでございます。
他面、国の司法機関たる裁判所が言い渡し、最終的に確定した裁判を速やかに実現することも刑の執行の任に当たる者の重要な責務であるということは言うまでもございません。もし、再審請求の手続中はすべて執行命令を発しない取り扱いをするものということであるならば、死刑確定者が再審請求を繰り返す限り永久に刑の執行をなし得ないということになりまして、刑事裁判の実現を期するということは不可能になるものと言わなければならないところでございます。
したがいまして、死刑確定者が再審請求中であったといたしましても、当然棄却されることを予想せざるを得ないような場合におきましては、執行を命ずることもやむを得ないと考えております。
○福島瑞穂君
ひどい答弁だと思うんですね。
例えば、かつて無罪になりました再審の中で、免田栄事件、これは再審開始決定は第六次再審請求中になされております。島田事件、赤堀さんの事件は、これは再審請求決定は四次です。ほかにも、例えば徳島ラジオ商殺し、これは死刑の事件ではありませんけれども、再審請求が開始されたのは第六次再審請求の最中です。何度も何度もやる中でやっと弁護士の目にとまり、権利を行使してやるという中で再審の門がやっと開き、無罪が最終的にはかち取れたケースは、いずれも何次も再審請求をしているケースです。
しかも、この小野さんが残酷だと思うのは、弁護士が書面を出し、本人も勇気百倍、頑張りますと言った直後に殺されている。それをどう考えるのかというふうに思います。本当に本人は権利行使の最中に突然断ち切られたというふうに思ったと思います。この宮川弁護士は死刑の執行を聞いて、当日拘置所に行って、夜十時過ぎまでも私はここに泊まると抗議をしてとどまられたというふうに聞いております。
大臣、どうですか。
○国務大臣(臼井日出男君)
先ほど来、個々の死刑執行についてはお答えできないというふうに申し上げておりますが、一般論を申し上げれば、例えば再審請求中であっても当然棄却される理由、毎回同じような理由であって、それが何度も繰り返されたというような状況であるとするならば、死刑が実施をされるということも当然あるものでございます。
○福島瑞穂君
大臣が署名をされたのはいつですか。
○国務大臣(臼井日出男君)
死刑執行の数日前でございます。
○福島瑞穂君
十三日というふうに聞いておりますけれども、閉会中になぜ死刑の執行をしたのでしょうか。
○国務大臣(臼井日出男君)
そのこととは、この死刑執行と開会中、閉会中ということは特に関係ございません。
○福島瑞穂君
閉会中になぜ執行したか。今、執行は常に閉会中の金曜日になされておりますけれども、なぜ閉会中に死刑の執行がなされたのかということをお聞きしております。
○国務大臣(臼井日出男君)
従来から開会中にも当然死刑執行されているわけでございますが、委員御存じのとおり、私も国会開会中は大変忙しく衆参駆け回っておりまして、やはりそうした状況の中でもって冷静な判断というのはできかねる、こういうことも含まれていると思います。
○福島瑞穂君
それはおかしいですね。大臣が署名をされたのは開会中、執行がされたのは閉会直後です。開会中お忙しい中で記録を十分精査される時間があったんですか。今お忙しいというふうにおっしゃったじゃないですか。
それから、お聞きします。弁護士の再審請求と本人の再審請求には差があったんでしょうか、なかったんでしょうか。
○国務大臣(臼井日出男君)
御指摘の者については十分精査させていただきました。
なお、再審請求につきましては、再審請求手続というものは非公開とされておりますので、お答えは差し控えさせていただきます。
○福島瑞穂君
大臣は月曜日、十三日に署名をした。弁護士が十三日に電報を発信、本人は十五日に手紙を書いた。拘置所は検閲をしますから、この間の動きがわかるわけです。大臣は執行までの間、十三日以降、この事実を聞かれましたか。
○国務大臣(臼井日出男君)
先ほど来申し上げておりますとおり、死刑執行についての具体的なことについてはお答えできないと申し上げております。
○福島瑞穂君
私は、その事情を知って死刑の執行をしたのであれば非常に問題だと思いますし、もしそういう事実がきちっと大臣のところに届いておらずということであればまた問題だと思います。
死刑に関して言えば、過去三年四カ月死刑執行がない期間がありました。しかし、一九九三年三月、死刑が再開され、それ以来十二月の執行で全部で三十五名の人が処刑をされております。これは八〇年代と比べると五倍もの量です。しかも、今回の執行が問題なのは、本当に頑張りますと言った直後に殺されてしまうという、権利の行使をどう考えているのかということで私は強く抗議をしたいというふうに思います。
では次に、戦時中の未払い賃金の供託の問題についてお聞きをします。戦時中、朝鮮半島より徴用、動員された労務者、軍人軍属等の未払い賃金等の扱いについてお聞きします。
この未払い賃金は現在供託されているというふうに聞いておりますが、総額幾ら、何人分あると法務省は把握されていますか。
○政府参考人(細川清君)
御指摘のような供託事件は一般の弁済供託でございまして、そういうものとして特別に統計をとっておりませんので残念ながらちょっと資料がございません。お答えできません。御容赦を願います。
○福島瑞穂君
じゃ、またその統計などを後ほどでも教えてください。
これは供託がされているわけですけれども、戦後すぐ供託がされた理由は何なんでしょうか。
○政府参考人(細川清君)
本来、工場等で働いた方には賃金を払う必要があるわけですが、その方々の住所、居所が明らかではないということで民法に基づいて弁済供託がされたというふうに理解しております。
○福島瑞穂君
でも、被徴用者に関しては基本的に本籍、住所が把握されておりますから、居所、住所不明の供託の理由には当てはまらないと考えますが、いかがですか。
○政府参考人(細川清君)
供託の手続はいわゆる形式審査手続でございまして、提出された供託書の記載から供託事由があるかどうかということを判断して供託するわけでございます。
したがいまして、供託書の記載に照らして、被供託者が所在不明というふうな状態にあるものと判断された場合には供託を受理するということになるわけでございます。
○福島瑞穂君
戦時中働いていた人たちはこれを全然受け取っていないわけですよね。本人たちの住所、本籍は会社側が把握されているわけですから、連絡ができないということには当てはまらないというふうに考えます。
ところで、これは現在どのような状況で保管をされているのでしょうか。
○政府参考人(細川清君)
これは通常の供託事件として多数の供託書と同じように扱われております。
○福島瑞穂君
本人あるいは遺族がその返還請求をすれば、それは受理することができるのでしょうか。
○政府参考人(細川清君)
被供託者ですから還付請求ということだと思いますが、法律上の要件があれば当然還付請求することができるということになります。
○福島瑞穂君
では、今還付請求をしますとこれは受け取れますか。
○政府参考人(細川清君)
ですから、法律上の要件があるかどうかということを判断するわけでございますが、御指摘のような方の場合には、まず日韓請求権協定がございまして、それに基づいて法律が制定されておりますので、韓国籍の方につきましては特別法に基づいて請求権が消滅しているということになりますので、これは払い渡しに応ずることはできないという結論になるわけでございます。
○福島瑞穂君
新聞によれば、例えば六万余人がいたんじゃないかとか、未払いは二億三千七百万円ではないか。当時のお金で、調査団が調べたところによると三十三万人分、五千万円。当時の五千万円ですから物すごい金額になると思うんですね。
それで、今、日韓協定の話がありましたが、一九九一年八月二十七日、柳井外務省条約局長は国会答弁で、日韓両国政府が国家として持っている外交保護権を相互に放棄したというだけにすぎず、個人の請求権を消滅したものではないと答えておりますが、いかがですか。
○政府参考人(細川清君)
柳井条約局長の答弁は承知しておりまして、私どももそのとおりだと考えております。
供託金の、問題の供託金還付請求権は、日韓請求権協定自体によってなくなったわけではなくて、この協定を踏まえて制定された国内立法、これは非常に長い名前の法律でございますが、これによって消滅したということでございます。そういうふうに私どもは供託を担当する立場としては理解しているところでございます。
○福島瑞穂君
これもまた本当にひどい話だと思うのは、戦争中働いて賃金があった、その未払い賃金はでも戦後すぐ供託をされてしまった。この日韓条約ができるのは一九六五年です。戦後二十年間本人に通知がされなかったわけですね。本人たちは知ることができれば返せと言うことはできたと思うんですが、なぜこれは二十年間放置されたんでしょうか。
○政府参考人(細川清君)
サンフランシスコ平和条約におきましてこれは別途取り決めるということになっておりまして、ただいま御指摘のときに日韓の間の協議が調って日韓請求権協定が締結された、このように理解しているところでございます。
○福島瑞穂君
日韓条約を締結するまでも時間があるのに、本人たちへ通知すらされなかったと。通知したけれども届かなかったということではないですね。通知すらされなかったと。それはやはり怠慢というか、問題があったと考えますが、いかがですか。
○政府参考人(細川清君)
これは供託自体が住居所不明ということで供託されておりますので、当然通知はできないわけでございます。
○福島瑞穂君
一度でも戸籍、住民票、住所のあるところに通知などはなされたんでしょうか。
○政府参考人(細川清君)
ただいまお答え申し上げたとおりでございまして、供託所の方から通知を申し上げたことはありません。
○福島瑞穂君
先ほど日韓条約と法律百四十四号の話をされました。では、お聞きします。
北朝鮮籍の人が返せと言ったら、これは返してもらえるんでしょうか。
○政府参考人(細川清君)
先ほど申し上げました請求権協定及び法律は、これは韓国の国籍のある方に適用があるわけでございますので、それ以外の方の場合には供託法の他の要件が満たされているということになれば払い渡し請求に応じることは可能でございます。
○福島瑞穂君
払い戻しの法的要件は満たしているのでしょうか。
○政府参考人(細川清君)
御本人である、あるいは御本人の相続人であるということを証明していただいて、あとは供託法の定める手続に従って払い渡し請求をしていただければよろしいわけでございます。
○福島瑞穂君
時間が来ましたので、これは今宙ぶらりんの状態で多額のお金が国に保管をされております。今の金額でも多額ですから、当時のお金に、当時と今との貨幣価値を考えれば莫大なお金が宙ぶらりんのまま保管をされています。これについてはきちっと対応する必要があると考えますので、また今後もよろしくお願いします。
○政府参考人(細川清君)
私、今、ただいま若干不正確なことを申し上げたんですが、政令二十二号、昭和二十五年の政令二十二号が適用あるものは、時効が別に政令で定める日まで来ないということになっていますから、この適用あるものは、先ほど言ったような方々については時効が来ていないので、そのほかの要件が満たされれば請求できるというのが一番正しいお答えでございます。
○福島瑞穂君
時間が来ましたので、最高裁とか呼んでいたのですが、ごめんなさい。ちょっと時間が来たので申しわけありません。
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