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出入国管理及び難民認定法の旅券等証明書常時携帯義務違反の運用に関する質問主意書
(2000年6月20日提出)

一九九〇年代に入り、外国人登録法第一三条の常時携帯義務違反の容疑で摘発される在日外国人が激減する一方で、出入国管理及び難民認定法第二三条の旅券等証明書常時携帯義務違反の容疑で摘発される者の数が急増している。その運用状況をめぐり、以下質問する。

一 警察庁がインターネットホームページで公開している警察庁来日外国人犯罪等対策室「来日外国人問題の現状と対策(平成一二年中)」の中の「入管法違反検挙状況」(二二ページ)に関して、一九八一年から一九九〇年まで各年の「旅券等不携帯提示拒否」件数及び人数を明らかにされたい。

二 近年、日本国民の多民族化が進行する中で、日本語を母語としない日本国籍者が、外国人登録証明書あるいは旅券の提示を求められ、運転免許証等の身分証明書を何ら所持していないために、警察に連行されるケースが生じている(「東方時報」二〇〇〇年四月一二日号)。人種、民族あるいは言語によって、日本国民とそうでない者を区別できず、また日本国民には身分証明書の常時携帯が義務付けられていない現状の中で、警察官は何を基準に日本国籍者と外国籍者を区別しているのか、明らかにされたい。また、このようなケースを生じさせないために、どのような対策が必要と考えるか、政府の見解を示されたい。

三 警察官が在留外国人と思われる者を、旅券等の証明書も外国人登録証も携帯していないことを理由として逮捕する場合、外国人登録証明書の常時携帯義務違反か、旅券等常時携帯義務違反のいずれを適用するかについての判断基準はあるか、明らかにされたい。

四 以下の三八か国について、在留外国人に対する旅券常時携帯義務があるか否か、ある場合はその対象者と根拠となる法令等を明らかにされたい。また、旅券不携帯に対する罰則があるか否か、ある場合はその内容及び根拠となる法令等についても、明らかにされたい。

  スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、オランダ、デンマーク、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガル、スイス、ベルギー、アイスランド、ロシア、アメリカ、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、中国、韓国、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、シンガポール、インド、イラン、トルコ、ブラジル、チリ、ペルー、メキシコ、アルゼンチン、南アフリカ、エジプト、ケニア。

五 私の平成一二年六月一日付け国際人権規約委員会「最終見解」についての実施状況に関する質問に対する答弁書(内閣参質一四七第五三号)の第三の6で、「改正後の外国人登録法の運用上の留意点等を取りまとめた執務資料を都道府県警察に発出し、その適切な運用に努めている」と記しているが、その運用上の留意点等とは具体的にどのようなことなのか、明らかにされたい。

  右質問する。

内閣参質一五一第三六号

  平成十三年九月二十五日

内閣総理大臣臨時代理
国務大臣 福田康夫

 参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員福島瑞穂君提出
 出入国管理及び難民認定法の旅券等証明書常時携帯義務違反の運用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


出入国管理及び難民認定法の旅券等証明書常時携帯義務違反の運用に関する質問に対する答弁書

一について

昭和五十六年から平成二年までの各年の警察による旅券等の常時携帯義務違反又は呈示義務違反に係る出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)違反事件の検挙件数及び検挙人員は、それぞれ、昭和五十六年が六十九件、五十七人、昭和五十七年が零件、零人、昭和五十八年が七十六件、五十九人、昭和五十九年が八十二件、七十九人、昭和六十年が百六件、九十九人、昭和六十一年が百三十件、百十四人、昭和六十二年が百四十五件、百三十二人、昭和六十三年が八十七件、七十六人、平成元年が百五十三件、百十三人、平成二年が二百五十三件、二百十人である。

二について

各都道府県警察においては、警察官の職務執行の相手方の人定事項を確認する必要がある場合において、当該相手方が日本の国籍を有する者であるか否かを直ちに確認することができないときは、当該相手方等の供述、関係機関への照会等に基づき当該相手方の国籍を速やかに確認するよう努めており、適正に対処しているものと承知している。

三について

警察においては、お尋ねのような判断基準は定めていないが、各都道府県警察においては、具体的事案に即して適正に対処しているものと承知している。

四について

旅券の常時携帯義務に関し、御指摘の諸外国政府に対して照会したところ、在留外国人に対して旅券の常時携帯義務を課している旨の回答があった国は、スウェーデン、デンマーク、フランス、スペイン、ポルトガル、ベルギー、ロシア、中国、韓国、フィリピン、マレイシア、インドネシア、イラン、トルコ、ブラジル及びチリであり、同義務の対象者及び根拠となる法令等は、別表一のとおりである。
また、右の旅券の常時携帯義務を課している国のうち、旅券不携帯に対する罰則がある旨の回答があった国は、デンマーク、フランス、ロシア、中国、韓国、フィリピン、マレイシア、インドネシア及びブラジルであり、その罰則及び根拠となる法令等は、別表二のとおりである。

五について

御指摘の執務資料においては、特別永住者(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)に定める特別永住者をいう。以下同じ。)による外国人登録証明書の常時携帯義務違反に係る外国人登録法(昭和二十七年法律第百二十五号。以下「外登法」という。)違反は警察の捜査の対象とならないこと、警察官が特別永住者に外国人登録証明書の提示を求める場合等は常識的かつ柔軟な姿勢で処理すべきこと等、外登法の運用上の留意点等を取りまとめている。


別表一
在留外国人に旅券常時携帯義務を課している国別対象者及び根拠法令等国

国  名 対  象  者 根  拠  法  令
スウェーデン 一六歳以上の外国人(特定の国(注一)の国籍を有する者、永住許可を受けている者及び難民等保護の必要から一時的な滞在許可を受けている者を除く。) 外国人法第一章第二項、外国人に関する命令第一章第一a項
デンマーク 八歳以上の外国人(EU加盟国(注二)、ノールウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの国籍を有する者を除く。) 外国人法第三九条、外国人に関する命令第四八条
フランス すべての外国人 新刑事訴訟法第七八−一条及び第七八−二条
スペイン すべての外国人 外国人法実施規則第五九条第三項
ポルトガル 一六歳以上の外国人 身分に関わる書類の所持に関する法律第二条、外国人法第一五条
ベルギー 短期滞在の外国人(EU加盟国人で身分証明書を携帯する者を除く。) 一九八一年一〇月八日官報掲載の入国、滞在に関する法律第四章第三八条
ロシア すべての外国人 「ソ連邦での外国人滞在の規則」(一九九一年四月二六日ソ連邦閣僚会議決定第二一二号)
中国 一六歳以上の外国人 外国人入境出境管理法実施細則第二五条
韓国 一七歳以上の外国人 出入国管理法第二七条第一項
フィリピン すべての外国人 出入国管理法第一〇条及び第一五条
マレイシア すべての外国人 一九五九年及び一九六三年入国管理法第三九条、一九六六年旅券法第二条
インドネシア すべての外国人 一九九二年出入国管理関係法律第九号第三九条b
イラン すべての外国人 外国人入国・在留許可関係法第一〇条
トルコ すべての外国人 旅券法第二条
ブラジル すべての外国人 外国人法第九六条
チリ 短期滞在の外国人 外国人規則第二条及び第五条

注一 「特定の国」とは、ベルギー、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、スペイン、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、オーストリア、ポルトガル、フィンランド及びスウェーデンである。

注二 「EU加盟国」とは、ベルギー、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、スペイン、フランス、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、オーストリア、ポルトガル、フィンランド、スウェーデン及びイギリスである。



別表二
旅券不携帯に対する罰則がある国別罰則内容及び根拠となる法令等


国  名 罰 則 根 拠 法 令 罰  則  内  容
デンマーク 外国人に関する命令第五六条 百五十クローネの罰金
フランス 新刑事訴訟法第七八−三条及び第七八−五条 官憲から身分の証明を求められたときから四時間以内を限度として、検査実施現場又は警察等の場所に身柄を拘束できる。
ロシア 行政違反法典第一八四条 警告又は罰金(金額は不明)
中国 外国人入境出境管理法実施細則第四三条 警告又は五百元以下の罰金
韓国 出入国管理法第九八条第一項第二号 百万ウォン以下の罰金
フィリピン 出入国管理法第四六条 五千ペソ以上一万ペソ以下の罰金又は五年以上十年以下の拘禁
マレイシア 一九五九年及び一九六三年入国管理法第五七条 一万リンギットを超えない罰金又は五年を超えない拘禁
インドネシア 一九九二年出入国管理関係法律第九号第五一条 最長一年の拘禁及び最高五百万ルピアの罰金又はその一方
ブラジル 外国人法第一二五条、軽犯罪法第六八条 最低賃金の二から十倍に相当する罰金




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