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司法制度改革に関する社民党の意見
2001年 3月12日

司法制度改革について(案)
社会民主党 内閣・法務部会 
 司法制度の抜本改革を検討している政府の司法制度改革審議会(会長・佐藤幸治京都大学教授)は、2000年11月20日に「中間報告」をまとめ、国民の司法参加、陪審制・参審制の導入の提唱などに関して大胆な提案を行なった。現在、本年6月にも予定される最終報告に向けて国民各層から意見を募りながら、詰めの議論がすすめられている。
 この際、司法制度改革をめぐる主な課題について「中間報告」で示された論点を踏まえて社会民主党の考え方を示しながら、市民の視点に立った司法改革の実現を強く訴えるものである。
1、司法を担う人的基盤の拡充
法曹の質と量の拡充のあり方
1.法曹人口の拡大の必要は認められるが、そのため「年間3000人程度の新規法曹の確保」が必要とされている中間報告の中身は十分な根拠のあるものとはいえない。まず、必要な法曹人口の「量」については綿密なニーズの調査に基づくべきである。また、その「質」を維持する方途や弁護士人口の地域的偏在の是正が担保されないまま、有資格者を粗製乱造することになってはならない。財界の望むような「ビジネスローヤー」が増えたとしても、それだけでは弁護士の付きにくい多種多様な民事事件や、懇切丁寧な取り組みが必要とされる少年事件などに手当てされることにはならないからである。
法科大学院構想について
2.法科大学院構想(ロースクール)は、法律家を目指すものが確実に知識を吸収し、資格を得ることができる点においては評価できるが、学歴、職歴、年齢にとらわれない多様な人材の法曹への道を狭める危険が大きい。現在は誰もが司法試験を受験することができるし、合格すれば法律家となることができるが、法科大学院では必要な年限が増え、学費も250万〜300万円ともいわれる巨額なものとなるといわれるため、能力がありながら道を絶たれる場合が想定される。
3.法科大学院の内容の審査は、法務省、日弁連も含む第三者機関を設置し行なうとされているが、大学の自治や学問の自由を侵害するおそれがある。法科大学院を持たない大学の法学部がロースクール予備校化するなど、学問としての法科が衰退する恐れもある。
司法試験と司法修習のあり方
4.現在でも若手の法曹のエリート意識化の進行、特定の分野への偏在化が懸念されている。非人間的といえる学習が必要とされ、知識の詰め込みの弊害が指摘されている現行の司法試験・研修システムだけでは、本来もっとも必要とされる資質である「人権意識」をもつ法曹を育てることは難しい。人権の守護者としての法曹を養成するという視点を第一とするべきである。
5.法曹養成教育はあくまで国民に寄り添う発想で行なわれるべきであり、司法研修所を地方に増設し、諸大学や市民によって運用するなど、教育の厚みを持たせるための多様な方法が検討されるべきである。
弁護士制度改革
6.法曹の圧倒的多数を占め、国民と司法の接点の役割を担っている弁護士制度は、極めて重要な課題である。弁護士へのアクセスの拡充、弁護士費用の透明化、弁護士倫理の強化、弁護士会の運営への国民参加など、すでに弁護士会の自己改革の努力によって一定の前進が見られているところである。今後、さらに積極的な改革を進め、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する」という弁護士の社会的使命を大前提とした制度整備を進める必要がある。弁護士業務の質の向上、隣接法律専門職種との関係の見直し、国際化への対応なども迫られている。
裁判官制度、法曹一元
7.純粋培養されたキャリア裁判官による官僚司法の弊害が指摘されながら、法曹一元の導入について、「多様な人材の確保」という曖昧な態度に落ち着いたことは残念である。国民の裁判官に対する信頼感を高め、司法の官僚支配を転換していくという観点から、法曹一元、判事補制度の廃止、裁判官の市民的自由の確立等について、さらに踏み込んだ議論が期待される。
2、国民に利用しやすい司法制度--制度的基盤の整備
敗訴者負担
8.国民の利用しやすい司法制度に関して、弁護士報酬の敗訴者負担制度が持ち出されたことは、この趣旨に逆行するものであり、国民を司法から遠ざける危険な動きである。裁判に負けたものが、相手の弁護士費用、訴訟費用を払うこととなれば、多くの人権事件、「セクシュアルハラスメント」事件訴訟、公害訴訟、株主代表訴訟など起こせなくなる恐れがある。「セクハラ訴訟」は多くが会社を相手方にしており、弁護士費用も高く大弁護団を組織するケースが多い。法律弱者が、さらに虐げられることにもなりかねない。審議会において、弱者の視点からの議論が十分にされていないことは遺憾である。
被疑者国選、被害者付添人制度等
9.公的被疑者弁護制度について、少年事件を含めて、制度創設の方向が示されていることは歓迎できる。弁護活動の自主性・独立性の尊重と弁護の質の確保の方策のあり方、運営主体の問題など具体的な制度構築をより良きものとするために引き続き慎重な検討を進めることが必要である。また、民事法律扶助制度の強化、証拠開示制度の拡充、取り調べ過程の可視化、身柄拘束の適正化なども積極的に進めることが必要である。
裁判の迅速化と公正な裁判の実現
10.裁判に時間がかかりすぎることへの批判は根強く国民を司法から遠ざける大きな要因となっている。裁判の効率化や迅速化をはかることは司法改革におけるもっとも基本的な課題もいえ、急務である。ただ、迅速化が拙速や不十分な審理の原因となってはならないのであって、十分な注意が必要である。
11.裁判において適正な判断がなされるために、証拠の偏在を是正し、証拠の隠蔽を許さない制度が求められている。証拠開示を徹底し、準備手続に際してすべての証拠が提出されるものとして、両当事者が対等な訴訟上の武器を得ることを保障するべきである。
裁判外の紛争解決手段(ADR)の拡充・活性化
12.法律上の紛争もその種類によっては裁判外の紛争解決手段(ADR)によって解決することがより効果的である。司法を国民に近いものとし、紛争の深刻化を防止する上でもADRの拡充・活性化は重要である。とくに問題が単純で軽微な紛争については、厳格な裁判手続によるよりも、より簡易で迅速な処理が可能なADRの意義は大きいと考えられる。
隣接法律専門職種の活用
13.弁護士以外の隣接業について、税理士の税務訴訟出廷陳述権、弁理士の特許侵害訴訟代理権、司法書士の簡易裁判手続への関与と法律相談業務、社会保険労務士の労働関係事件への関与などについて、ADRでの活用を含めて適正な役割分担のあり方について検討をすすめ、多用な法的サービスが適正に提供されるように改善をはかるべきである。
司法への物理的なアクセスの改善
14.現行の訴訟手続は、外国人や障害者などへの配慮が十分にされているとはいえないのが現状である。とくに刑事事件では、意思疎通の不十分等によって、深刻な事態となるケースも少なくない。裁判所内の移動のバリアフリー化や通訳人の充実等によってアクセスの改善をはかることは急務である。
3、国民の司法参加--国民的基盤の確立
陪審制度の導入
15.「中間報告」では、広く国民の司法参加をすすめるために「陪審・参審制等を参考」にした仕組みを整える方向は確認されているが、国民の実質的関与の内容と裁判官の役割の具体的中身がどのようなものになるのか、具体像は明らかではない。陪審制度を基軸に、国民が司法に実質的に参加する制度とするべきである。
4、その他
代用監獄制度と刑務所・拘置所の処遇の改善
16.国際人権(自由権)規約委員会からも厳しく批判されている、被疑者段階の被拘禁者の権利が著しく侵害され、不正な自白が強要されることによって冤罪の温床ともなっている代用監獄制度は直ちに廃止するべきである。同様に、刑務所・拘置所における不必要に過酷な規則を改善し、処遇の改善をはかり、被拘禁者への人権侵害を除去することは急務である。
5、市民の司法の実現に向けて
 わが国のこれまでの司法制度は、国民の期待に十分に応えてきたとはいえず、官僚的中央集権型のシステムの下で政官財の癒着構造を側面から支える役割を果たしてきた。日本国憲法や世界人権宣言の定める個人の尊厳と人権の確立のために、わが国の司法をこれまでの行政主導型の「小さな司法」から、社会の隅々まで「法の支配」がゆきわたる「大きな司法」へと転換させることは喫緊の課題である。
 また、経済のグローバル化、規制緩和の進展にともない企業や個人は自己責任を原則として透明なルールに従って行動することが求められるようになっている。その意味からも司法制度の改革が強く求められているところであるが、こうした理念の下に「この国のかたち」を見直すというのであれば、新しい社会の形にあわせてセーフティーネットを張り替える作業がどうしても必要である。
 司法制度改革審議会は本年6月頃には最終報告をまとめることとなっておりその行方が注目されるが、上記のような観点から考えれば、ただ司法制度の変更に留まらず、21世紀のわが国のあり方にかかわる重大な問題として認識することが必要であり、国民的議論と立法府における慎重な審議が求められる。司法審の答申はあくまで内閣が指針として用いるための参考意見であり、そのまま国民の議論を代表するものとするべきものではない。
 社民党は、「市民の司法」を実現する立場から、幅広い国民各層とともに院内外を通じて司法制度改革論議をすすめていく決意である。
以上 


 

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