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被収容者に対する懲罰制度の運用等に関する質問主意書
(2001年6月8日提出)

日本の刑事拘禁制度ついては、近年、被収容者動作要領の適正化、革手錠使用要件の厳格化など、行刑当局により改善の取組が一部行われたことは、国内外で評価を受けている。一方、依然として批判が絶えない問題として懲罰制度が挙げられる。そこで被収容者に対する懲罰制度の運用等について以下質問する。

一、懲罰と医師による診断について

1 懲罰執行前、執行中、執行後の診断(監獄法施行規則一六〇条二項、一六一条、一六三条)について、各段階ごとの診断内容(診断項目、科罰可能性の判断基準、その他)等を規定した文書が存在するか。存在するとすればその名称及び具体的内容について、明らかにされたい。

2 1において、診断内容を規定した文書が存在しない場合、具体的にどのような項目につき診断を行っているか、明らかにされたい。施設ごとに異なる場合、東京拘置所、大阪拘置所、府中刑務所、大阪刑務所並びにL級(千葉刑務所、岐阜刑務所、岡山刑務所、大分刑務所、熊本刑務所、宮城刑務所、旭川刑務所、徳島刑務所)及びW級(栃木刑務所、和歌山刑務所、笠松刑務所、岩国刑務所、麓刑務所、札幌刑務所)の各施設につき、具体的内容を明らかにされたい。

3 懲罰執行中の診断について、どのような時間的間隔で実施すべきかについて統一的な基準が存在するか。存在するとすればその名称及び内容について、具体的に明らかにされたい。

4 3において、統一的な基準が存在しない場合、具体的にどのような時間的間隔で実施しているか、明らかにされたい。施設ごとに異なる場合、2に掲げた各施設につき、具体的規定を明らかにされたい。

5 診断の結果懲罰不相当と認められた件数を、懲罰種類別、執行前、執行中の各段階別に過去一〇年間各年ごと明らかにされたい。

6 懲罰執行中の診断について、診断結果が記載される文書名及び規定の様式名を具体的に明らかにされたい。

7 過去一〇年間各年ごとに、執行後健康状態に異常があると認められた件数について、総数及び2に掲げた各施設ごとの件数につき、具体的に明らかにされたい。

二、「懲罰表」の「様式第一号の3(第一三条関係)」中、執行前健康状態欄に「執行差し支えなし(体重 s)」、執行後健康状態欄に「異常なし(体重  s)」との不動文字が各印刷されていることについて

1 懲罰の執行に差し支えがあり、又は執行後健康状態に異常があると認められた場合は、どの様式を使用し、どのような記載をするのか、具体的に明らかにされたい。

2 体重のみが記載されていることについて、その趣旨を具体的に明らかにされたい。

3 体重以外の診断項目の内容及びそれらが記載される文書名並びに規定の様式名を具体的に明らかにされたい。

三、監獄法が、懲罰執行前、執行中、執行後の各段階において医師の診断を義務付けていることは、懲罰(特に軽屏禁。)が被収容者の心身の健康状態を害するおそれが高いことから、これを防止する目的の措置であると考えられる。しかしながら、実際の被収容者、施設職員からの訴えによれば、懲罰手続における医師のチェックが有効に機能していないのではないかと疑わざるを得ない。現在の実務において、懲罰手続における医師の診断が、右のような目的を十全に果たしていると考えているか。政府の見解を示されたい。

四、懲罰と階級の低下との関係について

1 過去一〇年間の有期刑及び無期刑仮釈放者の出所時処遇階級別人数につき、各年ごとに明らかにされたい。

2 階級低下(行刑累進処遇令七四条)及び適用除外(同七五条)の各処分について、具体的にどのような要件で適用されるか、明らかにされたい。

3 階級低下及び適用除外の各処分の適用に当たっての基準は存在するか。存在するとすればその名称及び具体的内容について、明らかにされたい。施設ごとに異なる場合、一の2に掲げた各施設につき、具体的基準を明らかにされたい。

4 階級低下及び適用除外の処分について、一回の処分につき何階級低下するのか。

5 規律違反容疑者の取調べの後、懲罰不相当により終了したとき、懲罰審査会を開催した結果、「懲罰不相当」の旨の意見が出されたとき、審査会の「懲罰相当」の意見をもとに懲罰が科されたとき、及び同意見を基に懲罰が科されなかったときの、四つのケースにおいて、同時に階級低下及び適用除外の処分がなされた件数を、過去一〇年間、各年ごとに明らかにされたい。

五、いわゆる「収容者身分帳簿」について

1 「収容者身分帳簿」に編される文書につき、内訳の具体的名称を明らかにされたい。

2 1のうち、懲罰手続において、新たに作成される文書及び既に作成された文書に記載がなされる文書の、各具体的名称を明らかにされたい。

  右質問する。

内閣参質一五一第三四号

  平成十三年九月二十五日

内閣総理大臣臨時代理
国務大臣 福田康夫

 参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員福島瑞穂君提出
 被収容者に対する懲罰制度の運用等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


被収容者に対する懲罰制度の運用等に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

刑務所、少年刑務所及び拘置所(以下「行刑施設」という。)におけるお尋ねの健康診断については、平成三年四月十二日付け法務省矯医第九百三十八号法務省矯正局長通達「被収容者の健康管理について」(以下「局長通達」という。)により、自覚症状及び他覚症状の有無の検査、体重の測定その他行刑施設の医師が必要と認める項目について行うこととしている。

一の3及び4について

懲罰執行中の健康診断をどのような時間的間隔で実施するかについての統一的な基準は設けていないが、各行刑施設において、懲罰の執行を受けている個々の者の心身の状態に応じて、適時に行っている。

一の5について

お尋ねの各件数については、これらの記録が被収容者個々人ごとに編てつされており、これらを調査・集計することは作業が膨大なものとなるため、お答えすることは困難である。

一の6について

懲罰執行中の健康診断の結果は、局長通達第二号様式をもって定める「健康診断簿」に記載している。

一の7について

お尋ねの件数については、これらの記録が被収容者個々人ごとに編てつされており、これらを調査・集計することは作業が膨大なものとなるため、お答えすることは困難である。

二について

懲罰執行に関する健康診断の項目については、一の1及び2についてで述べたとおりであり、これらの健康診断の結果は、一の6についてで述べた健康診断簿に記載するほか、被収容者について軽屏禁の執行に差し支えがある等の事情が認められた場合には、被収容者身分帳簿及び名籍事務関係各帳簿様式(平成十三年法務省矯保訓第六百五十一号法務大臣訓令)様式第四号をもって定める「視察表」にその状況を記載し、懲罰表の健康状態の欄には、当該視察表の番号を記載することとしている。
懲罰表の健康状態の欄に不動文字として体重が記載されているのは、体重測定が健康診断に際して必ず実施される項目であるほか、その結果は、懲罰執行前と懲罰執行後の身体状況の差異を客観的に示す有意な指標であるからである。

三について

懲罰の執行に関する医師の健康診断は適切に行われており、受罰者の健康管理という目的を十分に果たしているものと考えている。

四の1について

全国の行刑施設における平成三年から平成十二年までの間の各年のお尋ねの人員は、別表のとおりである。

四の2について

行刑累進処遇令(昭和八年司法省令第三十五号。以下「処遇令」という。)第七十四条の規定に基づく処遇の階級の低下(以下「階級低下の処置」という。)は、当該階級に滞留させることにより特にその階級の秩序を乱すおそれがある者に対し、また、処遇令第七十五条の規定に基づく処遇令の適用を除外する処置(以下「適用除外の処置」という。)は、最低の階級に属する者が規律を乱し累進処遇を行うのに適さないものと認められる場合に、それぞれ、行い得ることとされている.

四の3について

行刑施設の長が被収容者に対し階級低下の処置又は適用除外の処置を行うか否かを決定するに当たっての基準は、存在しない。

四の4について

階級低下の処置を行う場合において、一回の処置で何階級を低下させるかについての法令上の定めはなく、一般には一階級低下させることが多いものの、階級の秩序を乱すおそれの程度等によっては二階級以上低下させることもあり得る。

四の5について

お尋ねの各件数について把握することができる記録が存在しないため、お答えすることができない。

五について

被収容者身分帳簿に編てつすべき文書としては、表紙、身体等調査表、執行指揮書・判決書謄本その他の入監文書及び前科調書、指紋原紙、分類調査票、作業工場舎房指定表、視察表及びその添付書類、懲罰表及びその添付書類、行刑成績考査表、接見表、書信表、入所時感想録、誓約書、教育原簿、健康診断簿、受刑者出所調査票の写し等がある。
このうち、懲罰手続において作成又は記載がなされる文書としては、視察表及びその添付書類、懲罰表及びその添付書類並びに健康診断簿がある。


別表

一 有期刑仮出獄者の出所時処遇階級別人員

第一級 第二級 第三級 第四級
平成三年 2,229 8,398 2,668 36
平成四年 2,253 7,451 2,301 24
平成五年 2,196 7,696 2,245 16
平成六年 2,325 7,536 2,198 13
平成七年 2,467 7,081 2,237 28
平成八年 2,641 7,128 2,204 23
平成九年 2,844 7,181 2,415 45
平成十年 2,953 7,158 2,467 43
平成十一年 3,068 7,196 2,611 40
平成十二年 3,074 7,139 2,617 86

二 無期刑仮出獄者の出所時処遇階級別人員

第一級 第二級 第三級 第四級
平成三年 21 16 1 0
平成四年 12 12 1 0
平成五年 9 13 0 0
平成六年 13 12 1 0
平成七年 5 15 2 0
平成八年 4 11 2 0
平成九年 11 9 0 0
平成十年 14 4 0 0
平成十一年 6 4 1 0
平成十二年 8 4 0 0

 



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