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拘禁施設における革手錠及び保護房使用に関する質問主意書答弁書追加
(2000年3月31日提出)

 我が国における被拘禁者の人権状況には多岐にわたる問題点がある。一九九五年には国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチによる調査レポートが、九七年及び九八年にはアムネスティ・インターナショナルによるレポートが、それぞれ公表されている。日本弁護士連合会も九八年に国際連合規約人権委員会に提出したカウンターレポートにおいて刑事被拘禁者の人権状況を分析している。

 これら内外の人権団体の報告を踏まえ、九八年一一月に規約人権委員会は、日本政府の第四回定期報告書に対する最終見解(以下「最終見解」という。)を発表した。最終見解では、我が国の刑務所制度について懸念が表明されている。すなわち、最終見解二七項において「委員会は、規約二条三項(a)、七条、および十条の適合性について深刻な問題が生じている日本の刑務所制度の諸側面に関し、深い懸念を抱いている。とくに、委員会は以下の事項について懸念を有している」として六項目を取り上げている。その六項目の中には、「刑務官による報復行為に対し、不服申立を行った受刑者に対する保護が不十分であること」、「残虐で非人道的な取扱いとなりうる革手錠のような保護手段の多用」等が含まれている。

 前述のアムネスティのレポートでは、日本における刑事被拘禁者は組織的で、残虐な非人道的若しくは品位を傷つける取扱いを受けており、残虐な懲罰にさらされる高い危険性があるとされている。また、施設当局に裁判を提起したり、弁護士に依頼しようとしたり、国連の人権委員会に手紙を書こうとしたりした被拘禁者に対して、「反抗的な」というレッテルを貼り、システマティックな虐待が加えられている疑いがある、との指摘もある。

 以上のように、我が国の拘禁施設における被拘禁者の人権状況は、国際的な関心事となっており、「残虐で非人道的な取扱いとなりうる」革手錠の使用状況について明らかにすべきであると考える。

 以下質問する。

 一九九八年一月二一日、両手を身体の後ろで締める革手錠の使用方法について、いたずらに身体的、精神的に強度の苦痛を与え、自分で用便の始末をすることも不可能であり、食事も犬のようにするしかないとして、違法であるとする判決が東京高等裁判所で下された。その他にも革手錠により後遺症が残るほどきつく締められた事例も報告されている。政府は、このような判決をどのように受け止めているのか。また、このような革手錠の使用について改善するつもりはないのか。

 革手錠とともに拘禁施設内の保護房の使用も、人権上の問題をはらんでいる。九六年七月には松江刑務所浜田拘置支所において保護房に放置された受刑者が熱射病で死亡する事件が起こっている。このような事故が起こった理由は何か。また、政府は、保護房の使用についてはどのような見解を持っているのか。

 最終見解の発表後、革手錠を濫用的に使用したという訴えは減少しているようだが、最終見解を踏まえた運用の見直しを行ったのか。革手錠以外のより人権侵害のおそれの少ない方法を検討する必要があると考えるが、政府の見解はどうか。また、拘禁施設全体の革手錠及び保護房の使用の件数を九〇年から九九年まで各年ごと明らかにされたい。さらに、一九九〇年以降で革手錠及び保護房の使用に関し、運用上の改善を行ったとすれば、それを示されたい。

 東京拘置所、大阪拘置所、府中刑務所、大阪刑務所、横浜刑務所、千葉刑務所、岐阜刑務所及び熊本刑務所のそれぞれ各施設における革手錠及び保護房使用に関して、以下の諸点につき、九〇年から九九年までの各年ごとに明らかにされたい。

1 革手錠使用件数及び保護房収容件数
2 革手錠使用及び保護房収容の事由別
  (自傷のおそれ、看守に対する暴行、看守に対する暴行気勢、同囚に対する暴行、
  同囚に対する暴行気勢、争論、大声など)の件数
3 革手錠の使用の様態別(両手前、両手後、片手前、片手後など)の件数
  右質問する。

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内閣参質一四七第二一号

  平成十二年五月二十六日

内閣総理大臣 森 喜朗

      参議院議長 齋藤十朗 殿

 参議院議員福島瑞穂君提出拘禁施設における革手錠及び保護房使用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


施設における革手錠及び保護房使用に関する質問に対する答弁書


一について

  御指摘の判決は、当該事案の具体的な状況の下においては、両手後ろの方法による革手錠の使用及びその継続は、刑務所長にゆだねられた裁量権の範囲を超え、又はその濫用があったものとして、違法の評価を免れないものというべきであるとしたものであるが、政府としても、同判決の指摘を謙虚に受け止め、革手錠の使用について、より一層の適正な運用に努めているところである。

二について
  御指摘の時期に松江刑務所浜田拘置支所の保護房に収容されていた受刑者が死亡した事実はあり、現在、本件事故に関し、国を被告とする損害賠償請求訴訟が松江地方裁判所に係属中であるが、現時点では、右受刑者に、通常では予見できない何らかの急性症状が発症し、その身体が急激に悪化し、死亡するに至ったものであると考えている。
  政府としては、被収容者が、逃走、暴行・傷害、自殺・自傷等に及ぶおそれなどがあり、かつ、一般の居房に収容することが不適当と認められる場合に限り、その者を保護房に収容することができると考えており、また、保護房への収容に当たっては、事態に応じ、その目的を達成するため合理的に必要と判断される限度を超えてはならないと考えている。

三について
  御指摘の最終見解については、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号)第二十八条に基づいて設置された人権委員会の意見として謙虚に受け止めている。しかしながら、従来から、革手錠の使用については、事態に応じ、その目的を達成するため合理的に必要と判断される限度を超えることのないように努め、残虐又は非人道的取扱いにならないよう配慮しているところである。
  現時点では、革手錠の使用が必要とされるような場合において、革手錠を使用した場合と同程度に戒護の目的を達成し得る他の方法が見当たらないので、革手錠の使用を廃止することは困難である。
  平成二年から平成十一年までの各年ごとの革手錠の使用件数及び保護房への収容件数は、別表一のとおりである。
  革手錠の使用又は保護房への収容については、従来から、事態に応じ、その目的を達成するため合理的に必要と判断される限度を超えることのないよう努めてきたところであり、平成二年以降においても、行刑施設の処遇部門の責任者等を集めた協議会等において、適正な運用に努めるよう周知徹底してきたところであるが、それ以外にも、平成十一年十一月一日、革手錠等の使用及び保護房への収容について、より一層の適正な運用を図るため、従来のこれに関する通達に代えて、新たに法務省矯正局長から各行刑施設の長等に対し、通達を発出した。その主な内容は、戒具使用中又は保護房収容中の者については、綿密かつ頻繁に視察し、その動静を的確に把握するとともに、進んで精神の安定を図るための働き掛けを試み、早期に解除できるよう努めること、保護房に収容されている者に対しては、保護房収容のみでは、逃走、暴行又は自殺を抑止できないと認められる場合に限り、戒具を使用することができること等について改めて徹底するなどしたものである。

四について
  御指摘の各行刑施設における、平成二年から平成十一年までの各年ごとの、革手錠の使用件数及び保護房への収容件数は別表二の一及び二の二のとおりであり、革手錠使用及び保護房収容の事由別件数は別表三の一の一から三の八の二までのとおりであり、革手錠使用の態様別件数は別表四の一から四の八までのとおりである。


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別表一 「革手錠の使用件数及び保護房への収容件数」
別表二 「各行刑施設における革手錠の使用件数及び保護房への収容件数」
別表三 「革手錠使用及び保護房収容の事由別件数」
別表四 「革手錠使用の態様別件数」


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