●市民の絆東京
福島 こんにちは。井上さんと社民党との関係は、私より深くて、市民の絆東京の代表をずっとやってらしたんですよね。市民の絆東京は、どういう経緯でできたか話をしてくれますか。
井上 1996年に土井さんが社民党の党首を引き受けられましたでしょう。衆議院選挙のときに。あの民主党と分裂した後ね。あのときに私は、土井さんにぜひ引き受けてほしいと思ったんですよ。というのは、私は、やはり民主党というのは、グローバル化の時代、グローバリズムに乗った政党だと思うの。そのためにいい側面もないわけじゃなくて、例えば、情報公開とか、そういうことはできる。それから国際政治への対応とか、そういう点ではできることもあると思うけど、市民の生活を守る、平和を守る、という政党がなくなってしまったら困ると思っていたら、土井さんが、引き受けてくださった。このまま名誉の引退をされてもいい人が、もう1回引き受けて下さる以上、市民の側も何かしなくちゃいけないんじゃないかなぁと思ってたんです。あのときに、小さな政党になってからの衆議院選挙で、市民やNGOと結びつきたいという声がいろんなところからあったんですよね。岩崎駿介さんとか、私とか、村井吉敬さんとか、いろんな人たちに党の側から働きかけがあって、でも狭い世界だから、みんな1つになって、じゃ、そういうのを作りましょうか、ということになって「市民の絆」になったんです。名前がいいでしょう。
福島 私は、市民の絆東京やいろんなところに呼ばれて話をしている中で、社民党で立候補するという外堀が自然に埋められてしまったという感じだったんですが、井上さんが今回神奈川から参議院に出馬されることになったきっかけなど、ちょっと話していただけますか?
井上 順繰りみたいなものですよね。私は社民党を強くするためになんでもやりましょうと思っていたら、福島さんが「今は、立候補することが最大の協力です」っておっしゃったので、最初に私が外堀を埋めて、今度は、福島さんが外堀を埋めて、そういうような感じですけど…。横浜生まれだし、横浜に育っていて、横浜って好きなんですね。やっぱり、港町って外に開かれた明るさというのがあるでしょう。
福島 神奈川はなんてったって、長洲県政もあったし、それから革新自治体もたくさんあったので、どこか文化の香りがするというのもいいですよね。市民運動も女性運動も平和運動も労働運動も活発ですからね。それで井上さんのやってきたことを話してもらえますか?
●日本の政治はまったく時代に合っていない
井上 学生時代にベトナム反戦運動に関わりました。日韓条約やベトナム反戦運動から、アジアを知ろうということで、80年くらいからはアジア太平洋資料センターに関わって、その中で東南アジアの各国の住民運動とかNGOに参画している人たちと知り合っていきました。例えば、通貨危機の問題とか、世界の資本とか世界のどこかが動くとアジアの国々にものすごく影響がある。世界銀行の構造政策プログラムの影響で、インドで長年蓄えてきたいろんな知恵などがどんどん企業に買われていってしまうとか、そういうことに対して国境を越えて市民が結びついて、多国籍企業とか国際金融資本とか、そういうところと対峙していくということをずっとやってきました。ここ1、2年は、アフリカの最貧国の債務問題とか、これもアフリカの貧しい国々が、子どもたちの命を犠牲にして北の国々に返済しなければならない不道理性とか、そういうことを日本の社会に訴えてきて、やっぱり日本の市民がもっと世界の市民に向けて視野を開いていくということを目的にして活動をしてきたんですけど…。
福島 グローバリゼーションの問題は、国会議員の中で取り上げている人が非常に少ないと思うんですよね。で、国会って、非常に不思議なところで、皇国史観、神道政治連盟的なものと、その経済のグローバリゼーションが両立をしている。
井上 私、思うんですけど、日本の政治って、まったく時代に合ってないんですね。
福島 パチパチパチ。
井上 世界の動きとまったく関係ないという感じで…。これでは、世界から信用を失うと思いますよね。で、実際、すでに日本に誰も期待しなくなりつつあると思って、これもちょっとヤバイと思うんですけどね。グローバル化で情報などが一気に広がっていくから、これは、否応なしにそういう時代だと思うんですよね。だから、視野は全世界に持って、全世界に対して日本はどういうふうにしていくかということを持たなきゃいけないのに、それと切り離して、日本は日本の中だけ見て、日本の国境の中だけ見て、日本の政策を決めると、そして一方、経済だけは全世界を市場にすると、そういうふうにはいかないと思うんですね。だから経済のグローバル化に関して言えば、命に関わること、人間の生命に関わることは、これは、環境も含めて、国内であれ、国際であれ、基本的には、商売の種にしてはいけないと思うんですよね。命に関わることは、商売の対象にしないというふうな人間の側の基本原則を持って、その上で国際的な政治にどう関わっていくのかという原理・原則が今、大事じゃないかなと思います。原理・原則がないままに経済のグローバル化だけ進行していくのは、とても危険だと思う。
●倫理に裏打ちされた国際政治の実現
福島 安田節子さんが取り組んでいる遺伝子の組み換えの問題も、一見して食料だけの問題と思えるけど、彼女の話を聞いたり、勉強していると明らかに多国籍企業の種子支配、食物支配によっているわけです。ところで、債務帳消しキャンペーンについて、ちょっと話をしてくれますか。
井上 やっぱりね、ODAとか、日本のODAの使い方とか、そういうことに関して日本の市民が関心持ったほうがいいし、それから国会の中で、ODAは、最大の外交政策の実施の手段だと言われているけれども、国会の中であまりにも議論がなさ過ぎるということがありますよね。日本のODAは最近になって、グラント比率(贈与の比率)が高くなりましたが、以前はローンだったから、そのときに日本が金利付きで貸したお金がアフリカの国々の債務になっているわけですよね。実際に冷戦時代に、社会主義化するのを防ぐという政治的な目標で、非常に独裁的な政権に、独裁的な政権だと知りながら貸し付けをしていて、それが今借金になっていて、その後民主化された国々が、貧しいのに血税を使って、返さなくちゃいけないという状況にあるんです。この問題を世界に知らせていくことが、世界中で広がっていて、日本の中では、まだまだ不十分ですが、世界では、すごく大きな強い動きになっているんです。まったく道義的な問題だと思うんですね。貧しい国の人々が、命を削って北の国々に借金を返すのかという問題だし、そういった道義的な問題って、すごく大事だと思うんですよ。地雷の問題もそうですけど、なんだかんだと言っても、兵器をつくっているのは、北の国なんですよね。で、兵器を北の国が南の国々に売って、その結果として南の国々に紛争が起こる。南の国々の子どもたちとか、やっぱり道義的な問題をそのまま見過ごしにしない、きちんと倫理に裏打ちされた国際政治が実現するように日本の政治にも変わってもらわなきゃいけないと思うんです。そうですよね。
福島 オリンピックで、南北朝鮮の人たちが、手を携えて行進する。これは、辻元清美さんが言っていたんだけれど、外交、防衛部会の理事懇談会で、「北朝鮮の脅威、脅威と言っていたけれども南北朝鮮が1つになったら、脅威がなくなるじゃないか」って言ったら、自民党の政治家は、「朝鮮半島が1つになると脅威だ」と言って、本当にいい加減にしてくれというか…。
井上 結局ね、日本だけじゃなくて、アメリカもそうでしょう。要するに先に兵器があって、武器があって、その武器を使うために敵をつくっているという軍事産業の利害が中心になっていると思うの、膨大な企業利益でしょう。いろんな意味で軍事産業が技術を引っ張ってきたことは事実だけれど、軍事生産を止めさせるということが基本にないといけないと思う。金大中大統領が偉いのは、アメリカは必ずしも歓迎していないと思いながらも、アメリカが正面切って反対できない形で、あぁやって、平和イニシアティブを実現してしまう。このくらいの外交ができたらいいですよね。そうしないと恥ずかしい。だって日本のほうがもっと経済力があるし、実際にアメリカに逆らってでもやろうと思えば、多少逆らったとしてもアメリカが一気に攻めてくるわけでもないし、できることがいっぱいあるのに何もやらないで、あちこちの顔色を伺っているという状況ですよね。日本人として恥ずかしいし、私なんかもNGOとしていろんな国際会議に出てきて、やっぱりこういう日本の外交って、恥ずかしくってとても人に誇れない。もうちょっとは、人に自慢ができるような国になってほしいって思いますよね。21世紀になるともっと大胆な発想が必要だと思うんです。やっぱりアジア全体で、もうちょっと共生できるような経済協力や枠組みづくりを、国益主義ではなくて、世界全体に役に立つことが、日本にとってプラスなんですという憲法を軸にしながら、国内的にも国際的にも実行していくような政治にしていきたいですね。
福島 それでは、どうもありがとうございました。しなやかに、したたかに頑張りましょう。
井上 ありがとうございます。
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