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2000年6月5日発行
11 号



   
「神の国」から「人の社会」へ
   
国会報告
いい法律、悪い法律どんどん通る 国会の動き、要注意・要チェック
   
対談1
 東門(とうもん)みつ子さん・福島瑞穂
「平和発信と男女平等参画を進めたい」
   
対談2
安田せつ子さん・福島瑞穂
「命や環境を最優先する政治に変えよう」
   
書評
共生と協調の社会へ向けて―未来への扉を開く
 『聖杯と剣』〈リーアン・アイスラー著/法政大学出版局〉
(評者:戸田綾美)
コラム:「なぜ西村真悟さんは強姦発言を連発するのか」
   
OPINION
大詰めを迎えた「自然エネルギー促進法」
飯田哲也
 「やり直せるよ」というメッセージ ―アミティの哲学―
 坂上 香
   
MIZUHO NOTES
   
 
   
   

 
5

 書評 共生と協調の社会へ向けて―未来への扉を開く
 『聖杯と剣』
 リーアン・アイスラー著
 法政大学出版局
 定価:3,500円(税別)
 評者:戸田綾美 Ayami Toda
 弁護士。元第二東京弁護士会両性の平等に関す
 る委員会委員、東京都セクシュアル・ハラスメ
 ント防止検討委員会委員ほか。

 私たちの社会には、とてもたくさんの暴力がひそんでいる。女性に対する暴力はもちろんのこと、様々な人権侵害や差別にしても、戦争にしても、そして自然破壊にしても、暴力的なものとは切り離せない。この社会は、どうしてこんなに暴力的で破壊的なのだろう? 私たちは、何か別のやり方で社会をつくることはできないのだろうか。
 この本の著者は、この切実な問いに答えるために、私たちをなんと、はるか先史時代の社会に連れて行く。どうも当時の人々は、私たちとはまるで違ったスタイルで社会をつくっていたらしいのだ。
 話は紀元前4000年以前のヨーロッパにさかのぼる。近年の考古学によれば、この時代の社会は、すでに相当豊かな文化を持っていたのに、現代よりもずっと平和で、ほとんど戦争をしなかったという。
 その上そこでは、貧富の差が非常に小さく、しかも、女性と男性が今よりずっと平等で、富や地位を同様に分けあって、協力して社会を営んでいたというから驚いてしまう。つまりそれは、一方が力によって他を支配しようというタイプの社会ではなく、平等な人々の結びつきを中心におき、共生と協調をもとめる社会だったというのだ。
 うーむ、いったいどんな考え方をすれば、そんな社会をつくり出すことができるのだろうか?
 そのヒントは、当時広く根づいていた彼らの神話にあるらしい。後の世に現れる神々とは違って、彼らの神々はまず女性であった。そしてそれは、人々と自然に生命を与え、誕生、生、死、再生を循環させる宇宙の力の象徴だったという。
 人はこの自然の生命の循環の中で、自然と調和して生きるものと考えられていた。そして、生命を与え励ます力に価値をおく彼らには、人を殺し、戦争をする能力は重んじられなかったようだ。またそこでは、性や生殖は、女性と男性が結び付き、ともに新たな生命を生み出す大切なプロセスとして尊重された。そこでは、女性が出産機能があるからという理由で、差別され、抑圧されたりすることはなかったのである。
 しかし不幸なことに、その後、歴史上には好戦的で男性優位的な支配志向の文化が現れ、男性支配、自然や性の管理と搾取、構造的な暴力という一連のシステムがつくられ、それは現代にまで続いている。
 でも、これらの一見永続的に見える問題も、別に人間社会の避けがたい宿命ではなかったわけだ(この辺の事情は、本書の続編『聖なる快楽』に詳しい)。
 暴力、搾取、闘争の文化から、共生と協調の文化へ。生命を軽視し、生を分断する価値観から、私たちの生命とそのプロセスを、そして多様な人々のつながりを、ほんとうに大切にできるような価値観へ――。今、危機の時代にあって、著者は、これまでのスタンダードを逆転させて、新しい、未来のための価値観と社会をつくり出そうと呼びかけている。そして、私たち人間にはその力が備わっているのだ、という熱い励ましのメッセージを送っている。ジェンダー、環境、暴力、人権、平和などの問題に取り組み、私たちの未来の扉を開こうとする、すべての人に読んで欲しい本である。

◆なぜ西村真悟さんは強姦発言を連発するのか
 戸田綾美さんが紹介をしてくれたが、アイスラーさんの本を読むといろんなことがハラリとわかってくる。彼女は、社会を「支配形態社会」と「協調形態社会」に分け、人類の歴史を様々な角度から分析していく。彼女のすぐれている点は、性差別を様々な抑圧の中心、根底に置いている点である。人と人との関係が、支配・被支配によって作られ、国と国との関係も侵略するか、侵略されるかでしか考えられない。
 そう考えると、なぜ国会議員の西村真悟さんが、強姦発言を連発するのかよくわかる。「集団的自衛権は『強姦されてる女を男が助ける』という原理ですわ」といった具合である。石原慎太郎さんの「三国人」発言も差別と排除と軍事大国化がセットになっていることがわかる。タカ派の人たちは例外なく性差別主義者である。
 アイスラーさんの本を読むと性差別の問題と戦争や平和の問題が結びついて、いろんな視点を獲得できる。「協調形態社会」への道のりも見えてきて勇気づけられる。(福島瑞穂)


 

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