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人身取引の防止及び被害者の保護に関する法律(案)  


目次
 第一章 総則(第一条―第四条)
 第二章 基本計画等(第五条・第六条)
 第三章 人身取引被害者支援センター等(第七条―第十条)
 第四章 被害者の保護(第十一条―第十四条)
 第五章 雑則(第十五条―第二十一条)
 附則

第一章 総則
(目的)

第一条 この法律は、人身取引が被害者の人権を著しく侵害し、その心身に多大な苦痛を与えるものであることにかんがみ、人身取引の防止及び被害者の保護について、国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本計画等の策定、人身取引被害者支援センターの業務等を定めることにより、人身取引の防止及び被害者の保護を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「人身取引」とは、次に掲げる行為をいう。
一 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、誘拐し、若しくは売買し、又は略取され、誘拐され、若しくは売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、若しくは蔵匿すること。
二 前号に掲げるもののほか、営利、わいせつ又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、十八歳未満の者を自己の支配下に置くこと。
三 第一号に掲げるもののほか、十八歳未満の者が営利、わいせつ若しくは生命若しくは身体に対する加害の目的を有する者の支配下に置かれ、又はそのおそれがあることを知りながら、当該十八歳未満の者を引き渡すこと。
2 この法律において「被害者」とは、次のいずれかに該当する者をいう。
一 人身取引により他人の支配下に置かれて本邦に入った者
二 前号に掲げる者のほか、人身取引により他人の支配下に置かれている者
(国及び地方公共団体の責務)
第三条 国及び地方公共団体は、人身取引を防止するとともに、被害者の適切な保護を図る責務を有する。
(連携協力)
第四条 国、地方公共団体及びその他の関係機関、人身取引の防止及び被害者の保護を図るための活動を行う民間の団体その他の関係する者は、人身取引の防止及び被害者の適切な保護のための施策が円滑に実施されるよう、相互に連携を図りながら協力しなければならない。

第二章 基本計画等
(基本計画)

第五条 内閣総理大臣、国家公安委員会、法務大臣、外務大臣、厚生労働大臣及び国土交通大臣(以下この条及び次条第四項において「主務大臣」という。)は、人身取引の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本的な計画(以下この条及び次条第一項において「基本計画」という。)を定めなければならない。
2 基本計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 人身取引の防止及び被害者の保護に関する基本的な事項
二 人身取引の防止及び被害者の保護のための施策の内容に関する事項
三 その他人身取引の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する重要事項
3 主務大臣は、基本計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。
4 主務大臣は、基本計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(都道府県計画)
第六条 都道府県は、人身取引の防止及び被害者の保護のための施策を実施するため必要があると認めるときは、基本計画に即し、当該施策を実施するための計画(以下この条において「都道府県計画」という。)を定めなければならない。
2 都道府県は、都道府県計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、人身取引の防止及び被害者の保護を図るための活動を行う民間の団体の意見を聴くものとする。
3 都道府県は、都道府県計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
4 主務大臣は、都道府県に対し、都道府県計画の作成のために必要な助言その他の援助を行うよう努めなければならない。

第三章 人身取引被害者支援センター等
(人身取引被害者支援センター)

第七条 都道府県は、当該都道府県が設置する婦人相談所その他の適切な施設において、当該各施設が人身取引被害者支援センター(以下「支援センター」という。)としての機能を果たすようにするものとする。
2 支援センターは、被害者の保護のため、次に掲げる業務を行うものとする。
一 被害者に関する各般の問題について、相談に応ずること又は婦人相談員若しくは相談を行う機関を紹介すること。
二 被害者(被害者がその家族を同伴する場合にあっては、被害者及びその同伴する家族。第六号及び第九条において同じ。)の一時保護を行うこと。
三 被害者の心身の健康を回復させるため、医学的又は心理学的な指導その他の必要な指導を行うこと。
四 被害者の民事手続における権利の適切な実現及び刑事手続への適切な関与に係る援助について、情報の提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うこと。
五 被害者(外国人に限る。第十三条及び第十四条において同じ。)の適法な在留又は円滑な帰国に係る手続について、情報の提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うこと。
六 被害者を居住させ保護する施設の利用について、情報の提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うこと。
3 前項第二号の一時保護は、婦人相談所が、自ら行い、又は厚生労働大臣が定める基準を満たす者に委託して行うものとする。
4 支援センターは、その業務を行うに当たっては、日本語に通じない被害者の適切な保護を図るため、通訳の確保に努めるものとする。
5 支援センターは、その業務を行うに当たっては、必要に応じ、人身取引の防止及び被害者の保護を図るための活動を行う民間の団体との連携に努めるものとする。
(婦人相談員による相談等)
第八条 婦人相談員は、被害者の相談に応じ、必要な指導を行うことができる。
(婦人保護施設における保護)
第九条 都道府県は、婦人保護施設において被害者の保護を行うことができる。
(被害者の保護のための広域的な連携)
第十条 都道府県は、被害者が当該都道府県以外の都道府県の支援センターによる保護を受けることが適切であると認めるときは、当該支援センターによる保護を受けるために必要な連絡及び調整を図らなければならない。この場合においては、被害者の意思を尊重するよう努めるものとする。
2 地方公共団体は、被害者の適切な保護を図るため、広域的な連携協力体制の整備に努めなければならない。

第四章 被害者の保護
(発見者による通報等)

第十一条 被害者であると思われる者を発見した者は、その旨を支援センターに通報するよう努めなければならない。
2 警察官、入国審査官、入国警備官その他その職務上被害者を発見しやすい立場にある者(次項において「警察官等」という。)は、これを自覚し、その職務を行うに当たり、被害者の発見に努めなければならない。
3 警察官等は、被害者に関する相談を受けた場合又は被害者であると認められる者を発見した場合には、支援センター等の利用について、その有する情報を提供するとともに、必要に応じ、その者について支援センターに必要な保護を依頼するものとする。
(支援センターによる保護についての説明等)
第十二条 支援センターは、被害者に関する通報又は相談を受けた場合には、必要に応じ、被害者に対し、第七条第二項の規定により支援センターが行う業務の内容について説明及び助言を行うとともに、必要な保護を受けることを勧奨するものとする。
(被害者の在留についての配慮)
第十三条 国は、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)の規定の適用に当たっては、被害者の心身の状況、その置かれている環境等を踏まえ、被害者の保護に資するよう、被害者の在留について適切な配慮をするものとする。
(被害者の帰国の支援)
第十四条 国及び地方公共団体は、本邦にある外国の大使館等及び国際機関と連携を図りつつ、被害者の円滑な帰国を支援するものとする。

第五章 雑則
(職務関係者による配慮等)

第十五条 人身取引に係る被害者の保護、捜査、裁判等に職務上関係のある者(次項において「職務関係者」という。)は、その職務を行うに当たり、被害者の心身の状況、その置かれている環境等を踏まえ、被害者の人権を尊重するとともに、その安全の確保及び秘密の保持に十分な配慮をしなければならない。
2 国及び地方公共団体は、職務関係者に対し、被害者の人権、人身取引の特性等に関する理解を深めるために必要な研修及び啓発を行うものとする。
(教育及び啓発)
第十六条 国及び地方公共団体は、人身取引の防止に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。
(調査研究の推進等)
第十七条 国及び地方公共団体は、人身取引の防止及び被害者の保護に資するため、人身取引の実態、被害者の心身の健康を回復させるための方法等に関する調査研究の推進に努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、人身取引の防止及び被害者の保護に資するため、人材の養成及び資質の向上、専門的知識又は技能を有する職員の配置並びに必要な施設の整備等に努めるものとする。
(国際的協調のための措置)
第十八条 国は、人身取引の防止及び被害者の保護のため、外国政府又は国際機関との情報の交換その他人身取引の防止及び被害者の保護に関する国際的な相互協力の円滑な推進を図るために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(民間の団体に対する援助)
第十九条 国及び地方公共団体は、人身取引の防止及び被害者の保護を図るための活動を行う民間の団体に対し、財政的援助その他の必要な援助を行うよう努めるものとする。
(都道府県及び市の支弁)
第二十条 都道府県は、次に掲げる費用を支弁しなければならない。
一 第七条第二項の規定に基づき同項に掲げる業務を行う婦人相談所の運営に要する費用(次号に掲げる費用を除く。)
二 第七条第二項第二号の規定に基づき婦人相談所が行う一時保護(同条第三項に規定する厚生労働大臣が定める基準を満たす者に委託して行う場合を含む。)に要する費用
三 第八条の規定に基づき都道府県知事の委嘱する婦人相談員が行う業務に要する費用
四 第九条の規定に基づき都道府県が行う保護(市町村、社会福祉法人その他適当と認める者に委託して行う場合を含む。)及びこれに伴い必要な事務に要する費用
2 市は、第八条の規定に基づきその長の委嘱する婦人相談員が行う業務に要する費用を支弁しなければならない。
(国の負担及び補助)
第二十一条 国は、政令の定めるところにより、都道府県が前条第一項の規定により支弁した費用のうち、同項第一号及び第二号に掲げるものについては、その十分の五を負担するものとする。
2 国は、予算の範囲内において、次に掲げる費用の十分の五以内を補助することができる。
一 都道府県が前条第一項の規定により支弁した費用のうち、同項第三号及び第四号に掲げるもの
二 市が前条第二項の規定により支弁した費用

附 則
(施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(検討)
2 この法律の規定については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。

理 由
人身取引が被害者の人権を著しく侵害し、その心身に多大な苦痛を与えるものであることにかんがみ、人身取引の防止及び被害者の保護を図るため、国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本計画等の策定、人身取引被害者支援センターの業務等を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
  この法律の施行に伴い必要となる経費
この法律の施行に伴い必要となる経費は、平年度約   円の見込みである。

 

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