参議院 教育基本法に関する特別委員会 2006年12月7日
◆質疑
◆教育基本法改正について◆
◆教育基本法改正について◆
○福島みずほ君 社民党の福島みずほです。
今日は四人の参考人の皆さん、本当にどうもありがとうございました。
それぞれ四人の皆さんの教育に懸ける情熱と、子供たちのために一体今の時点で何ができるのかという実践と哲学とについて、大変感激をいたしました。私たちもそのことを国会の場で本当に生かしていきたいというふうに考えております。
四人の参考人の皆さん全員に共通をしていたのは、教育予算をきちっと付けるべき、もっと教育を大事にしてほしいという点は四人の皆さん本当に共通だったと思います。
古山参考人にお聞きをいたします。
今日、国の関与ということが非常に問題になっておりますが、私は、国は教育内容に口を出すべきではない、個人の内心に口を出すべきではない、環境整備に国は頑張るべきだというふうに思いますが、その点について改めていかがでしょうか。
○参考人(古山明男君) いろいろ、先進国になってきちゃいますと、画一的なのは無理なんですね。先進国は学校の独立性が非常に高くて、おおむね教育内容を文化領域みたいなものとしてとらえて、行政は箱、要するに箱をちゃんとつくると。それから、その中身を運営するのは教育者であり、保護者なんだと。この分担というのはきちんとやっていますし、これはどこの国でも、憲法上の要請というのはやはり内心の自由というのはあります。
それで、子供に対してどこまで踏み込めるか、もちろんあるんですけれども、基本は子供が勝手にまねするんですね。ただ、押し付けたって入らないというのは、これはみんなどこの御家庭でも承知で、でも大人が本当にこれいいなと思っていると自然に親に伝わるというようなもので、そしてこれはもう法律もくそも、内心へというのは方法はないんですね、本当の意味で立ち入るというのは。ふりをさせることしかできないわけです。そういう意味で、当たり前の話として内心まで法的にはできないと。グレーゾーンみたいなのがいろいろあるんですけれども、そこはまあ御審議いただいてというふうに思うんですけれども。
ちょっとこれに関連してなんですけれども、教育基本法を作ろうと言い出したのは田中耕太郎という文部大臣なんですね。今回これが話題になっていますので、この人が「教育基本法の理論」という大変分厚い本を出しているんで、これ読んでみたんです。ちょっとびっくりしました。こんな高い水準の研究があの時代にあったのかと。私は、これはアメリカより水準高いことをやっていたと思います。
この本でもって、教育とその社会、それから法律、この関係はどうなっているのかということを明らかにしようとしているんですね。結論だけ申しますと、教育というのは文化現象であると。思想、技術、文化、科学、そしてそれを、文化現象をサポートしていくのが行政の役割なんだと。これが基本じゃないかと思っています。
○福島みずほ君 参考人の皆さんの御本を読みましたが、古山参考人の「変えよう 日本の学校システム 教育に競争はいらない」という御本を拝読させていただきました。
教育に競争は要らないというのはどういう意味でしょうか。
○参考人(古山明男君) 実際に自分で生徒を相手にしていまして、それは私、勉強主義じゃないんだけれども、親御さんも点数期待するし、子供が取れればいいと思っているわけですよ。それで、じゃ、どうやったら点数が取れるようになるかと。競争意識をあおり立てて伸びる子は既にいい点取っている子だけです。こういう子はもう自分でこうやればいいというやり方が分かっているから、もっとこうなるといいんじゃない、だれ君よりも、何番になればいいんじゃないなんて言うと、うんなんて頑張る子供ができるんですね。ところが、本当にこの子は援助をしてやらなきゃならぬという子は、頑張れと言ったって頑張り方を知らないんですよ。やり方も知らない、習慣付けもない、それから思考パターンもできてない。そういう子供たちに競争を持ち込んじゃうと、かえって逆効果なんですね、ああ、僕駄目だって。
大体中学生を見て、偏差値、現実問題としては業者がやっていますので、私、本当に義務教育課程、本当の意味で身に付いているのは大体上三割から四割だと思います。残りは競争をやっているもので、かえって行っちゃうんですよ。で、競争をやると大体三層できるんですね。上はこなせている層なんです。これはもっと伸びようと頑張って一生懸命やるんですね。それで、真ん中の層というのは、一生懸命頑張ってつじつま合わせてまあ何とか付いていく。一番下の層というのは、もう競争の中にいないんですね、もう知らないよで。いつも寝ているだけ、いつ遊べるかなと考えているだけ。それで、競争させて、この中下層に対してはかえってマイナスに働いちゃう。上層だけ。しかも、上層の子もいつも落ちるんじゃないかと不安になる。それよりも的確な技術と親切です。もう結局それに尽きます。
○福島みずほ君 藤原参考人にお聞きをいたします。
今日、非常に、実践の話を聞かせていただいて何かとてもわくわく、楽しく、今の中でかなりいろいろできるということもとても分かって、元気付けられました。
教育基本法、現行教育基本法の一条は、自主的精神に満ちた国民の育成ということを掲げているわけですが、私も、指令を受けて何かをやるとか画一的に何かをやるということではなく、一生の中で自分の判断で物を考えられて、自分として行動できるという子供たち、国民をつくることが、民主主義の中で、批判精神も持ち、議論し、討論し、民主主義にとって一番大事だと。この自主的精神に満ちたということが一番大事だと思うのですが。
もっとも、地域の中で教育主権在民のような形で、本当に子供たちが自主的精神に満ちた中で、またネットワーク型で子供たちを地域で支えていくという実践をされているということで、その教育の関与、国家の関与などについてと、その民主主義ということについて一言お聞きします。
○参考人(藤原和博君) 私、三十七歳のときに、リクルートにおりましたけれども、四歳になる長男を連れましてイギリスに渡りました。その後、ロンドンとパリに二年四か月暮らしたんですが、現地の小学校に入れまして、そのときに担任の、インド系の先生でしたけれども、この人が言った言葉が非常に印象的だったんです。自分たちが子供を見る際に、それが四歳の子であっても、インディペンデンスとコントリビューションという言い方をしまして、どれぐらい自立性を持っているかということと、それからクラスにどういう貢献をするかと言うんですね、そういうことだったんです。私は、これが、ああいう百年前に頂点を極めてからゆっくりと美しく衰えている成熟社会のその市民を支えている原則だなと思ったんです。
それで、今、和田中の教育目標は、もう私が赴任しました四年前から自立貢献という、これを教育目標にしています。非常に大事なことだと思いますし、またOECDが全世界の研究成果を集めまして、これから三つの力が非常に大事になると言った中にもこの自主性、自立性というのが出てきます。非常に大事だというふうに思います。
ただ、ここで一つ皆さんにも分かっていただきたいことがあるんですが、これを阻害するものがあるとしたら何かといいますと、テレビを見過ぎていることです。
今、小学校、中学校の子たちは二時間以上のテレビを見ておりまして、二時間十五分、平均としますと一年で八百時間テレビ漬けになっています。一方、学校の授業の総授業時間数は、道徳や国語や体育や学活全部入れて八百時間なんです。学力に関する英数国理社の時間数は四百時間です。テレビ八百時間以上対学力にかかわる英数国理社の授業四百時間。これ、勝負はっきり付いていると思います。
もう一つ、自立を促進するものと考えられると思いますが、中毒になっちゃうとこれが全く逆方向に働くのが携帯です。
携帯メール、今、中学二年生、持たせまして放置しておきますと、二時間、夜中に二百通ぐらいのショートメールを交換します。ほとんどですね、テレビを見ている最中も、あるいは携帯でメール打っている最中も、自主的な意識というのは働かないと思うんですね。これは非常に大きな問題だということ。
学校はそういうこととも闘っているということを是非御理解いただければと思います。
ありがとうございました。
○福島みずほ君 今日は、教育委員会の在り方論ですが、本来の教育委員会、例えば公選制であるとか地域に根差したという形になっていれば本当によかったんですが、そうなっていない。だから、本日、活性化という議論も出ていると思います。
今日御指摘があったとおり、文部科学省の下部機関になっているという面と、それから、下部機関どころか、もっと突出して学校現場に命令をしていく、チェックをしていくという、そういう教育委員会の問題点も大変あると思います。
ところで、先日、東京地方裁判所で東京都の教育委員会が出している通達、日の丸・君が代に関する通達などが内心の自由を侵して憲法違反であるという画期的な判決が出ました。この判決について、教育委員会の在り方とも絡めて、中嶋参考人、いかがでしょうか。
○参考人(中嶋哲彦君) 私、その判決を見まして、今委員が御質問というかおっしゃられたとおり、非常に画期的な判決であると思います。
これは教育委員会として、学校の教育にかかわる際に、学校教育の具体的な内容にかかわる際に、どこまで踏み込んでよいか、どこから先は踏み込んではならないかということにかかわって言えば、教育の具体的な在り方、とりわけ個人個人の価値にかかわる事柄について、これは教育委員会は踏み込んではならない領域であろうと思います。これがたとえ学習指導要領に、そこに書き込まれていたとしても、それを促進する方向で教育委員会が学校に働き掛けるというのは適切なことではないと思っています。よろしいでしょうか。
○福島みずほ君 はい。
ところで、教育基本法改定法案の中には、法案の中身で、教育振興基本計画というのが十七条で新設をされています。政府が基本計画を作り、地方公共団体がそれを基にまた基本的な計画を定めるよう努めなければならないというのが法案の中身です。これは、一歩間違えると中央集権的なもの、国家の統制を非常に強めてしまう、自治体に対してというふうに思いますが、中嶋参考人、いかがでしょうか。
○参考人(中嶋哲彦君) 私もそのように考えています。この振興基本計画は、他の基本計画と、基本法がありますけれども、三十数本ありますね、それと比べてみてはっきり違うと思うのは、一つは、この教育振興基本計画を策定する際の具体的な手続が明確に定められていないということ、それから、振興基本計画の対象とすべき領域が明確に定められてない、限定されていない、どこまでも教育振興基本計画の内容として書き込むことができる内容になっていると思います。
それで、これは、大変危惧しているのは、これを所管する官庁が文部科学省だけではなくて、すべての省庁が教育振興基本計画の内容を提出できる、で、それが認められれば、政府が認めれば、それが振興計画の内容となるということです。
これは、例えばアメリカにおいてはNCLB法といいまして、ノー・チャイルド・レフト・ビハインド法という大部な法律がありますけれども、その中に、新兵を、軍隊ですが、軍隊に高校生をリクルートすることを促進する内容の規定があります。で、それを実施した学校には補助金が出るという形の制度があります。
これは、日本においても、この振興基本計画が全く無限定に定められているために、例えば防衛庁、まあ防衛省になるかもしれませんが、防衛庁のそのような計画が入ってしまう可能性もあると。で、それは、基本的な財政が枯渇しつつある地方行政にとっては、そのお金が欲しい、地方行政を支えていくためにはそういったお金が欲しいということで、そういった中央集権的な教育政策を進めていくお金を受け取らざるを得ない状況が生まれるのではないかということを大変危惧しています。
以上です。
○福島みずほ君 先ほど古山参考人から教育基本法についての田中先生の御著書の御紹介がありました。で、教育委員会は戦前の教育の反省を踏まえて戦後できたものだと思いますが、古山参考人、教育勅語、そして戦前の教育、何が問題だったとお考えでしょうか。
○参考人(古山明男君) これはやっぱりお国のための教育だっていう、それだけだったっていう。で、それぞれの人が国をつくっていくんですよ、あるいはそれぞれの人が社会をつくっていくんですよという、そういう視点が非常になかった。で、これはただ考え方にすぎないんですけれども、行政機構というのが非常に厳しくできてて、上で決めたことをやっていくと。例えば授業の内容も、教科書がありますと、その教科書どおりに先生が読んで、それ全部を覚えさせるというのが、それが戦前の教育なんですよね。その名残で、今も教科書をやっていく。だけど、あれじゃ本当の意味で考える子供を伸ばせっこない。それで、国家関与が非常に内容にまで強過ぎたことが戦前の最大の問題。それから、教育行政の方では、教育行政と一般行政が分離されていなかった、これが問題だと思っています。
○福島みずほ君 今日、藤原参考人に、非常に現場で生き生きとというか、苦労されているのかもしれません、頑張っていらっしゃる実践を聞いて、とても興味深くお聞きをいたしました。
例えば、指導要領が阻害要因になるとか、ちょっと、こういううるさいことを行政言わないでくれよみたいなことを、ざっくばらんにありますか。
○参考人(藤原和博君) 私、マネジメント的には超ですね、超が付くぐらい自由な雰囲気のあるリクルートというところから参りました。
で、どれぐらいたがはめられるのかなというふうに思って来たんですが、実際やってみまして、校長というのは現在でも、正確な意味での人事権と予算権がないということを除けば、かなり自由な立場です。ですが、これは杉並区がそういう、例えば時間をどう設定するかとか、儀式についてももう任せるというようなことを方針として出しているからそうなんですね。
一部の県では、例えば私が取りました四十五分の授業にしますと、荒れている学校じゃできないんですが、四十五分の授業にしますと、効率が上がって四こまになりますね、それによって丁寧な指導ができますから、底上げができるわけですね。
これは、ちょっと県は申し上げられませんけれども、ある県でそれを実施して、非常に生徒にも保護者にも評判の良かった学校があるんです。これに対して県教委が翌年、そろえてほしいと、五十分に。だから、非常におかしな話が起こっているわけで、特色を出せと一方で言っておいて、現場で言っておいて、それに対して特色を出すなというのが、これダブルバインドと言うんですけれども、そういうことが起こる。実際に四十五分制を取り入れて、荒れている学校を治めたという例も長野県にあったりするんですね。だから、そういうものがむしろ波及する方が、波及する仕事が私は教育委員会の仕事だと思うんですけれども、上位の、それが逆になっちゃっている。特色を出せと言って、一方でそろえろ、これは非常におかしな話だとは思います。
以上です。
○福島みずほ君 もうあらゆる現場でもっと自律性を保障される方がいいということの御意見は大変参考になりました。
高倉参考人、先ほど御説明で、もっと教育に予算を付けるべきだとおっしゃいましたが、そのことについて一言お願いします。
○参考人(高倉翔君) よく引き合いに出されるのは、OECD加盟国での教育予算、GNP比ですね、これを私どももよく取り上げて議論するわけでございますが、非常に残念なことながら、もう一番どん底に低迷していると。別にOECDの統計がどうのということではございませんけれども、やはり教育に対してもっと手厚い財政的な手だてをすべきではなかろうか。
今度、教育基本法の改正というものの原案が二つ出ておりますが、そのいずれも、やはり教育予算、財政措置ということについては非常に積極的な書き込みをされていると。別な言葉で言うと、教育基本法というものが、これまでの単なる理念法というものではなくて、もっともっと財政支出というような行政的責任を伴うものとして書かれているということに私は非常に強い賛成の意を表したいと思います。
以上でございます。
○福島みずほ君 あと一分。
古山参考人に一言お聞きをいたします。御本の中で、地教行法の改正によって教育委員会の権限が機能不全になったとありますが、やはりこの点について一言お願いします。
○参考人(古山明男君) ああ、これは長くて難しいな。
要するに、せっかく独立性を保った行政委員会にしたのに、そこに指導を付けちゃったら行政委員会の意味なくなっちゃうと、そういうことです。
○福島みずほ君 終わります。
ありがとうございました。
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