参議院 厚生労働委員会 2006年6月2日
◆健康保険法等の一部を改正する法律案・良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案に対する審議
◆参考人質疑◆
◆参考人質疑◆
○福島みずほ君 社民党の福島みずほです。本日は本当にどうもありがとうございます。
まず小松参考人にお聞きをいたします。
イギリスで医療費を増やしても医療が立ち直れていないとのことなんですが、その理由は何でしょうか。
○参考人(小松秀樹君) ランセットという非常に有名な医学雑誌がございます。これは、昨年のイギリスの五月の最初に総選挙がありまして、その直前の号で、表紙に、医師の士気の壊滅的崩壊と書いてある。すべての政党がこれに注目することができなかった、これを問題視できなかったと言っていますね。
ランセットは、実にイギリスでは政治家は医療を消費ととらえて、それで消費者中心の医療という、経済的な感じの物の見方を全政党がしていた。それで、消費者中心の医療だから、何でもかんでも要求しなさい、あなた方に何でも提供できますよというようなことを言ってきた。だけども、三十年弱ですけど、ずっと医療費を抑制し、それで供給が足りないから、患者からの暴力は年間十万人ぐらい受けている。そういうすさまじい中で、ちょっとぐらい医師、支給を増やして、お金を増やしたからそれが元に戻るかというのが、昨年の二〇〇五年の四月三十日ぐらいのランセットに載っていました。それは、医療費を五年で五〇%増やすと宣言してから五年後なんですね。
それから、私はもう一つあると思っています。それは、イギリスで良質の医療が医療保険で提供されているということなんです。医療がもう完全に崩壊してしまっているんで、今、イギリスで全く私費の保険、私費の医療があります。NHSという国営の医療は全員がほとんどただで受けられるんですけれども、それに一切頼らないで、お金を出してやろうと。
私の知り合いにNHSで働いている麻酔科医がいるんですけれども、彼女は、この私費の保険はNHSの給料では買えないと言っていましたですね。日本の駐在員はみんなこの私費の保険を買ってると。私は、日本にこの民間による医療提供、民間保険での医療提供システムができて優秀な医師がそちらに流れると、現在の皆保険での医療は質が下がって元に戻れなくなるというふうに考えています。
私はよく医療制度知らないんですけれども、完全に自由診療の場合に制限するというのはちょっと難しいかもしれないと思っているんですね。
今の医療の、現在の医療環境と患者との関係、費用の掛け方だと、医師は開業の方に流れるし、看護師さんは一年たつと二〇%ぐらい辞めちゃうんですね。それで看護師にならない、ほかの職に就いていくと。これは止められないと思います。今、医療のいろんな制度の話していますけど、そんなのと関係なしに、もうみんなどんどん辞めちゃっているということなんですね。
それで、これは、だけど実際には医師や看護師の本意ではないと思うんですね。本格的な医療現場で働くのはやっぱりみんな好きなんです。
私は思うに、都会で大きな保険会社が民間の医療保険を売り出したら、私は成功すると思っています。大きな病院で出資して私費の診療にすると。で、看護師の配置を二倍にする、優秀な医師を雇い入れると。気持ち良く働けて良質な医療が提供できるとなったら、給与はほんのちょっとだけ増やすぐらいでいいかもしれないし、あるいは、むちゃな勤務をなくしたら高い給与は不要かもしれません。
優秀な医師を集めるには病院の質を上げるのが最も重要で、外部委員会が医療の質を判定して徹底した質の管理を行う。スウェーデンのような無過失補償制度も、もうそういう民間の保険でやってしまうと。ただ、現在の保険診療よりはるかに良質の医療を提供するにしても、勤務医の収入がアメリカなんかに比べると、勤務医に関してです、特に大病院で働いている勤務医の収入ははるかに低い。ですから、それから富裕層は総体的に健康です。貧しい人と全く異なります。ですから、保険料は合衆国に比べたらはるかに安くできるはずなんですね。そうすると、ビジネスで十分に、ビジネスの専門家が考えれば多分成功すると思います。
リーダーとなり得る医師は全医師の五%以下だと思うんですね。リーダーになる医師がこういう病院に取り込まれるようになったら、もう後戻りは利かないというふうに思います。こうなると、国民の中で受けられる医療に大きな差が出てきます。社会に明確な階層がつくられることになる。
私はいろんな方と議論していて、特に医者の仲間では常に議論している相手がいるんですけれども、やっぱり崩壊は避けられないという意見の方が多いんですね。これはここまでの議論とちょっと感じ違うんですけれども。
ある有名な方は、崩壊してから立て直すことが、崩壊してから立て直せばいい。それで、今もまだ入試は、医学部の入試は難しくて優秀な人が来ているから大丈夫だろうと言うんですけれども、私は、崩壊すると、真っ当な医療が来ないとなると、みんな何かをやろうとする、そうするといろんな動きが出てきます。そうすると元に戻れなくなるんじゃないかというふうに危惧しております。
○福島みずほ君 地域間格差のことを一言お聞きをします。
医師、病院の偏在、今日も出ておりますが、小児救急科、産婦人科の不足などについて地域間格差が拡大をしています。ただ、残念ながら法案は切迫する地方の実態にこたえる内容となっていないというふうに思います。
この点について、地域からのいろんな声を聞かれるであろう河内山参考人、小島参考人、この点についていかがでしょうか。もしよろしければ、新しい提案されている制度は都道府県ごとに保険料が違ってきたり、あるいは医療費適正化計画を都道府県が作るわけですが、そういうことなどについても、あるいは診療報酬も都道府県によって違ってくるということが、診療報酬体系が変わってくることがあるわけですけれども、そういうことについてどう思われますか。地域から病院がなくなっている、あるいは小松参考人の話ではありませんが、地域から医療がどんどん悪くなっているという話も聞きますので、お願いいたします。
○参考人(河内山哲朗君) 以前にはなかったような話が、最近本当に身近なところでも起こるし、それから新聞やテレビでも報道されているとおりでございまして、以前は離島の問題、過疎地の問題、これは自治医科大学等の設置によりまして、いろいろと離島でも過疎地でも診療所を設置すれば先生方来ていただくという、そういう仕組みができ上がったんですが、最近は、先ほど来お話がありますように、産婦人科の問題、小児科の問題、これはごくごく身近なところでも起こっておる、そういう問題だと思っております。
全国市長会としましても、来週、全国市長会議を開催するわけでございますが、是非、この数量的な先生方の地域的な偏在、それから診療科目の偏在、こういったものについて、これはもう自治体ではいかんともし難い問題でありますので、国あるいは都道府県において、やはり着実に実効性の上がる対策を講じてほしいと。これは特別に決議をする運びになるだろうと思っています。
あとは、やっぱり先生方、お医者さんの大学での学ぶ時点からのやっぱりいろんな工夫も必要ではないかとか、いろいろとそういうこともよく市長同士の話の中でも出てまいりまして、やっぱり少し大学の方にもお考えいただかなきゃいけないことあるんじゃないかなというようなことがございます。非常に難しい問題であり、なお切実な問題でございますので、これは医療制度改革の話とはちょっと別枠な話かもしれませんが、深刻な問題が各地で起こっているということは御指摘のとおりだと思っております。
○参考人(小島茂君) 二点ほど御質問ありました。
一点目の地域の医師不足の問題です。
今回の医療法改正法の中には、都道府県レベルでの医療計画を作るという、その中に具体的な小児医療あるいは産科医療といった、各需要ごとに具体的に地域の医療機関あるいはネットワーク、そういうものをきちっとつくるということが入っています。それと、それを支えるために医療関係者の協議会をつくるというふうになっておりますけれども、それは圏内でのということについては一定の役割を果たすんだろうと思いますけれども、その都道府県自体で医師不足の問題とかいう問題があります。それはなかなかそこだけでは解消できないと思います。それはやっぱり全国レベルで、医師養成の問題も含めてもっと抜本的な対応が必要であるというふうに思っております。
その関係でいえば、取りあえず新しく医師を養成するとなると、最低でも医学部六年、そして二年の臨床研修、八年掛かりますので、その間どうするかというのはあります。やはり中長期的には、今の自治医大の方式を国公立大学にも適用するという形で地元での医師確保ということを進める必要があるんだろうというふうに思います。
それまで、じゃ待てないということもありますので、その次善策として、特に小児医療などについては、なぜ今小児医療の医師が過酷な状況にありますというと、なかなか、共働きで親が働いていて、昼間は子供を医療機関に連れていけない、どうしても仕事終わってから夜間に集中するということが指摘されております。そういうものを一定解消するためには、やはり今子供を預かっている保育所あるいは幼稚園等に看護師あるいは保健師といった者を一定配置して、その方が体調悪くなればその親に代わって医療機関に連れていくといった、そういったようなことも是非やるべきじゃないかと。そういうことをやって、当面の対応としてはやる。あるいは、地域の医療機関の集約、ネットワークということを図っていくという総合的な対応がまず必要ではないかというふうに思っております。それが一点。
もう一つの地域ごとの診療報酬の問題。
今回の法案の中には、都道府県の知事からの要請によって、地域ごとの診療報酬の見直しといいますか、そういうことを意見を述べることができる、それを受けて厚生労働大臣が対処するという仕組みになっておりますけれども。具体的に都道府県ごとの診療報酬というのは、どういうふうに全国レベルでの調整が付くのかというのは、なかなかここは難しい問題だと思いますけれども、そこは具体的にどういうことになるかはこれからだというふうに思っておりますので、最終的には、診療報酬になれば中医協でも議論になりますので、私も中医協のメンバーでもありますので、もしそういうことになれば、全国レベルでの診療報酬と地域ごとの診療報酬との整合性といいますか、それをどう図るかということについて具体的な議論をこれからしていきたいというふうに思っております。
○福島みずほ君 住江参考人にお聞きをいたします。
先ほど少し話をしていただけたんですが、後期高齢者専用の診療報酬体系が出てくることの問題点。ですから、例えば人工腎臓の診療報酬は、年齢に関係なく現役も高齢者も同じにしたらどうかというふうにも思ったりするんですが、要するに七十五歳になると違う診療報酬体系になると、この点は大変不安が広がっていると思うんですが、その点についていかがでしょうか。
○参考人(住江憲勇君) おっしゃるとおりで、七十五歳以上の後期高齢者専用の診療報酬、すなわち、みとり医療、そしてまた終末期医療、具体的にそういう名前を命名とかそういうことはないと思いますけれども、そういう範疇に入れられるということ自体が本当に厳しい問題だと思っております。
人工透析というのは本当に社会復帰そのものでございまして、それさえしていただければ本当に、私も付き合っている方々おられますけれども、立派に日常生活を全うできるわけですから、そういうところを後期高齢者医療のところに入れて、何か安上がり医療的なそういうところに持っていかれることは、本当にそういう方々の社会復帰というのをやっぱり阻害する、そういう重大な課題だと思っております。
○福島みずほ君 次に、柳澤参考人にお聞きをいたします。
先ほど子供たちの医療の免除の話がありました。社民党は、子供たちの医療の、それは親からの要請が強いので、マニフェストに掲げ、実は、出産費用の無料化も、去年、衆議院選挙で掲げました。柳澤参考人は小児科なので、産科のことを聞くと申し訳ないかもしれませんが、出産費用の無料化などについてはいかがですか。
○参考人(柳澤正義君) それはお父さん、お母さんの側から見ると、安ければ安いほどいい、ただであればそれが最もふさわしいというか望ましいということも言えないことはないわけですが、乳幼児の医療費と同様に、これは何といいますか、非常に明確な何か根拠があるとかなんとかというよりも、感覚的な問題として、ただより安いものはないというふうな感じで、何がしかの費用の負担というものがやはり個人に求められるということを私自身は否定はしないという立場でおります。
○福島みずほ君 小松参考人にお聞きをいたします。
「医療崩壊」という本を読まさせていただきました。アメリカについては、例えば最近読んだ本で、「市場原理が医療を滅ぼす アメリカの失敗」医学書院なんという本もありまして、日本が進むべきではない方向というのは見えるんですが、あと、日本のいい制度を生かしつつ、どう今の問題点をクリアするか。
「医療崩壊」と反対のことをやればいいということはよく分かるんですが、今のたくさんいろいろ問題がある中で、小松参考人が提言としてどういうことをお考えでしょうか。本や論文の中では、医療過誤の問題について、ある程度こういう制度があったらどうかという提言はありましたけれど、医療過誤以外の点で、例えばこの「医療崩壊」を迎えないために日本の医療についてこういうことをやったらどうかという点についてお聞かせください。
○参考人(小松秀樹君) 一つは、基本的には、今の医療は総額として安過ぎると思います、日本の医療費の掛け方は、世界的に見て、比較での話ですけど。これだけの医療費で、今の医療費でやれている国はほとんどないと思うんですね。
それからもう一つ言えることは、それでもまだ頑張っている、もうちょっとしたらつぶれる。つぶれる、崩壊寸前にあるから、崩壊した後のお金の掛かり具合から考えたら、アメリカでは医療は産業になっているので、お金が払えない人が一杯いるので、政府は日本よりはるかにお金出しているんですよね、医療に。だから、つぶれたときのことを考えて、もうちょっと医療に私はお金を出した方がいいと思っています。それが一つ。
それから、医療過誤の問題じゃないんですけれども、医療の現場がとげとげしくなっているのは、やっぱりコンセプトの問題だと思うんですね。死生観、死生観と医療に何が期待をできるのか、それから医療が公共のものなのか、一杯自分でお金を払ったら何でも言えるようなサービスなのかということなんですね。公共のものであるというんだったら、それを、公共のものはどういうふうな扱いでみんなが大事にしないといけないかというようなことを話さないといけないと思うんですね。医療についての、今の崩壊を防ぐのはもうむちゃくちゃ難しいと思うんですけれども、とにかく考え方が全然違っていて、日本人のもう行動パターンも全然変わってきている。
それから、これ、やれるかどうか分からないんですけれども、合意が得られるかどうかも全然分からない。それでも、国民注視の中で、大舞台で根本的な議論をやるべきだというふうに私は思います。
○福島みずほ君 ありがとうございます。
それでは、小島参考人にお聞きをします。
医療費適正化計画というのが医療費抑制策になってしまうんではないかとか、医療費抑制の問題についてどうお考えかお聞かせください。
○参考人(小島茂君) 今回の医療法等の改正の中で、あっ、健康保険法の方ですかね、医療費適正化計画を都道府県ごとに作成をするということになっておりますけれども、御指摘のように、どうも今回の全体の流れの中で見ていると、本当の意味の適正化といいますか、やはり医療の中でももっと効率的な、あるいはすべきことは当然あるというふうに思っております。そういうところよりは全体の医療費抑制というのが前面に押し出されているというふうに私としては思っておりますので、そういう観点から見ると、今回の医療費適正化計画というのも医療費抑制というところにつながってしまう可能性はあると思いますので、そこはきちっとよく、地域、都道府県ごとに作る場合にはそこは十分関係者が配慮して、本当の意味での、都道府県ごとの医療計画と併せてその適正化計画ということを作る必要があるんだと。そういう意味では、被保険者代表としての労働組合の立場からも、各地域における、そこについては十分配慮した対応をしていきたいというふうに思っております。
○福島みずほ君 ありがとうございました。
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