参議院 厚生労働委員会 参考人質疑 2006年4月26日
◆雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律案に対する審議
◆参考人質疑◆
◆参考人質疑◆
○福島みずほ君
社民党の福島みずほです。
今日は、参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
まず、川本参考人にお聞きをいたします。
女性差別撤廃委員会が二〇〇三年、日本政府に対して勧告を出しております。労働法制についてもいろいろ言っているわけですが、例えばパラグラフ三十三で、職種の違いやコース別雇用管理制度に表れるような水平的、垂直的な雇用分離から生じている男女間の賃金格差の存在の認識の不足に懸念を要する旨、勧告をしております。
この勧告をどう受け止めていらっしゃるのか、経団連としてどう受け止めていらっしゃるのか、お聞きをしたいというように思います。
○参考人(川本裕康君)
今、福島先生の方から、勧告の中身についてのうち、職種並びにコース別管理の賃金格差の問題ということがあったかと思います。実は私自身はこの問題、ここの部分について特に内部で検討したことはございませんけれども、ちょっと申し上げますと、この賃金の問題、先ほどの話とまた元に戻るんですが、日本において賃金がそもそもどんな形で決まっているんだろうかといったときに、まず需給関係によって決まっているということがございます。例えば初任給、どうやって決まるか。やっぱり景気の状況、労働者の需給関係で決まってくると。この需給要素が一番強いわけであります。
二つ目に、企業にとっての雇用政策というのがございます。日本の法律上は、採用の自由度というのは非常に経営側にとって高く与えていただいておりますが、いったん採用すると非常に制限が多々掛かるわけでございます。したがいまして、長期雇用の人間を雇う場合というときにはやはり雇用政策を組み立てている。その中でも、特に長期にいていただきたいということの中で、年功カーブですとかあるいは退職金規定ですとか、いろんなことをしながらこれを確保してきたという流れがございます。
もう一つ、賃金の中には、職務の価値としての賃金部分は当然ございます。これはどんな仕事の内容なのと。それが重いのか軽いのか、大変なのか、創造性が必要なのか、様々な中身から決まってまいる部分、そして社会政策の保護としての部分、これは例えば家族手当ですとかございますけれども、そういうものの中で決まってきているということをまず申し上げたいと思います。
そういう中で、実は職種、コース別で管理ということ自体が、比べる場合に、まずこの賃金の問題をきちっと踏まえておかなければいけないということが一つございます。それからもう一つ、日本におきましては、多くの企業がやっぱり長期的な視点から人事制度を設計しているわけでございまして、やっぱりコース別管理区分ごとの比較というのがやはり非常に重要なんだろうと思っております。
実は、雇用管理区分自体は別に男女別ということになっているわけではなく、性別を問わず、両方のポストも男女には門戸は開かれているんだというふうに考えてございます。したがって、機会の均等ではなく結果の平等を求めていくという視点ですと、先ほど言った結果からという話になろうかと思いますが、私どもの視点、あるいはこの均等法の視点は、機会の均等をいかに確保していくかというところにあろうかと思っております。
こんなところでございますけれども、よろしいでしょうか。
○福島みずほ君
個別企業の事情はある程度理解はできますが、総資本の考え方からいえば、格差が拡大をし、低所得者、貧困層が増えていくことは、総資本の立場からも、長い目で見れば問題ではないかというふうに思います。また是非、経団連もこの勧告を実現すべく、よろしくお願いいたします。
次に、龍井参考人にお聞きをいたします。
昨日の議論で、仕事と生活の調和は主として時間法制、非正規問題は均等処遇の問題、したがって均等法の問題ではないとの大臣見解が示されましたが、この点についてどうお考えでしょうか。
○参考人(龍井葉二君) 前段のことは、先ほど申し上げましたように、何度も繰り返して申しますような、この労働時間という切り口で見た二極化、これについて、九七年の改正法自体が無力であったということをどういうふうに今回の改正に生かすかということだと思っております。したがいまして、先ほど来規範という言い方を使わせておりますように、その基準そのものを見直すということでの均等法の位置付けというのが、あるいは均等法に期待されていることは非常に重要ではないかというふうに思っています。
非正規の問題もそれと関連してまいるんですけれども、専門家の福島さんの前でちょっと口の幅ったい言い方なんですけれども、今回の一方差別から性別による理由という、その性別というのは、私は素人考えで、ある種ジェンダー的な要素が必要なのかなと思っていますのは、結局、その在り方と、働き方としての男らしさというのが求められているわけですね。
つまり、雄々しい男というのが、正に二十四時間戦う男が求められ、それで、男勝りの女性というように、長時間の方に来る、働き方としてのその働き方があり、片方で、男性の方は、いわゆるフリーターとかいろんな言い方をされているのは、言わばこちらに付いていけない、雄々しい男になり切れない、つまり働き方で言うと女々しい男というふうに位置付けられてしまう、そういうふうに分化しているんだと思うんです。
したがって、今あるいわゆるセックスとしての男女というのではなくて、働き方の問題としてのそういう分岐というものに対してどういうふうにこの問題とらえていくかと考えていくと、正規、非正規というのは、先ほど指摘しましたように、正に男女問題、そういう意味での男女問題そのものだというふうに考えていますので、これは決して、別のパート法で均等待遇やったからということだけでは、先ほど来繰り返していますように、どっちに合わせるのかという問題が永遠に残るわけです。したがって、その基準、規範を合わせることとセットでこの問題は是非議論していただきたいと思っております。
○福島みずほ君
山田参考人にお聞きをいたします。
仕事と生活の両立ということが今極めて重要だと、男女ともにというふうに私も思います。そのとき、本来ならば均等法の改正法案に仕事と生活の両立ということを入れるべきではないかと考えますが、いかがですか。
○参考人(山田省三君)
今御指摘ありましたように、これは単に解釈の理念として、例えば、具体例として、もう身長・体重・体力基準とか転勤の問題が入っておりますけれども、恐らく身長、体重は、これは自己の選択と関係ない、恐らく間接差別が議論されるときに、転勤とか、これは自己選択じゃない、自分が行かないことを選択したんじゃないかということが絶対これは議論になると思うんですね。
先ほど、今回入っているパートの問題もそうですね。あなたはパートを自分で選んだじゃないか、自己の意思で選んだじゃないか、あるいは、世帯主も夫婦で決めたことじゃないか。これは実は、私どもの世界でオーバードクターといって、ドクター終わって就職できない院生が結構いるんですけれども、その場合でも、奥さんが働いて生活を、働いても世帯主はその院生ということになるということがあって、そういう意味で、それが恐らく自己の選択かどうかということをやはり検討するのがこの間接差別で一番重要な一つのポイントだと思うんですね。
これは社会的に強制された、社会的に選択されたものであるということ、それを判断するのがやっぱり間接差別の基本的な理念ということになる。その意味で、全くこれが単に生活の調和という、そういう意味で生活の中でその選択せざるを得ないという、そういう社会構造や雇用慣行の在り方に切り込んでいくという点で、そういう意味で、単に入れたらいいんではないかというだけじゃなく、むしろ、むしろ入れるべき、入れなければ間接差別の理念がきちっと議論されないんではないかと考えております。
○福島みずほ君
昨日、厚生労働省に対して質問して、私自身全く理解できないのは、三つの省令の限定列挙に関しては均等法上行政指導すると、しかしそれ以外に間接差別というのはあり得て、間接差別法理が機能する局面があると。間接差別法理がある分野があると。それは民法九十条の公序良俗違反等で言えるのだと。それは裁判でも訴えることは全く妨げないということなんですが。
なぜ、裁判所が違法と認定することよりも行政が行政指導する方がうんと狭いのかというのが実は理解できないんですが、この点について、山田参考人、坂本参考人、いかがでしょうか。
○参考人(山田省三君)
お先に答えさせていただきます。
恐らく、それはおっしゃるとおり、私もお聞きしましたら、やっぱり一つは、行政指導の対象としての間接差別と考えていらっしゃるところはあると思うんですけれども、それが公序違反、違法の範囲よりも狭いというのがよく理解できないところだと思います。
それからまた、私法上、恐らく公序違反と判断される場合、いろんな例挙げましたけど、野村の証券のあの男女別コース制についても、かなり裁判官というのは、まあ憶病と言ってはちょっとそれは言い過ぎで大変失礼な表現かもしれませんけれども、かなり条文にこだわって判断する。例えば、男女別コース制についても、改正均等法が施行された一九九九年四月一日からころっと変わって、それまでは公序違反じゃなくて、四月一日から公序違反になるという、それくらいやっぱり条文にこだわった判断をするということになりますので、恐らく、今先生の御質問の中で、行政指導の範囲よりも公序違反の方が広いという、恐らくその厚生労働省の考え方はやっぱり違って、むしろやっぱり同じになってしまう可能性が非常に裁判でも大きくて、均等法にすら規定されなかったんだから公序違反でないという判断です。結局同じことになるんではないかと考えております。
○参考人(坂本福子君)
私も今、山田先生がおっしゃったように、やっぱり裁判所の考え方というのは非常に狭い考え方、公序というものをどこまで解するのか、それから行政指導がどうしてその公序違反と見るものについて指導できないのかと。やっぱり限定列挙的な、それがあるから限定されてからそのほかについてはもう指導できませんといったときに、じゃ裁判所は、それは公序良俗に反して違法かということはなかなか言えないと思います。
ですから、そういう意味では、やはりこの均等法でやっぱりこの限定列挙を外していただきたいというふうに思っております。
○福島みずほ君
昨日、厚生労働省に質問したときに、例えば多くの男性が正社員、多くの女性が従たる職種の場合は間接差別となり得る、あるいは有期契約についても同じような回答だったので、その点は少しだけほっといたしました。しかし、その雇用管理区分やパートの問題についてどのように差別を撤廃していくべきか、龍井参考人、坂本参考人、いかがでしょうか。
○参考人(龍井葉二君)
繰り返し申し上げていますように、その雇用の二極化という、これは私はトータルの在り方を変えないと基本的には変えないと思っています。つまり、今回の均等法の問題でも、繰り返し言っていますように、男性の今の働き方基準が変わることによって初めてパートの在り方が変わってくる。つまり、非正規の、正規というその基準をまず変えなきゃいけない。
したがって、繰り返し言っていますように、均等待遇という、その一番ベースになることは当然なんですけれども、そこが何を目指すのかということの、そこに向かってあらゆる行政あるいは法律がそこに向かっていくんだということをきちんと示さない限り、先ほど来繰り返し言っていますように、どちらに合わせるんですかという検討問題が残る。そういう意味では、均等待遇と併せてそうした働き方基準を今回明確にし、主要には、私が申し上げた意味での男性的な、男性正社員的な働き方を基本から変えていくんだということがベースに必要だというふうに理解しています。
○参考人(坂本福子君)
私の方もやはり非正規の場合であっても、これはそこに働く女性の男女の平等全体にかかわってくると思うんですけれども、やっぱり仕事と生活、そこの中でやっぱり女性が非正規になって働くといったときに、果たしてこれでいいのかと。そうなってきたときにはやっぱりむしろ間接差別にかかってくるんじゃないかと。やっぱり間接差別を限定しないでもっと広げていったときに、それはやはり女性に対する、一方の性に対する差別だということは言えるんではないだろうか、そんな解釈の仕方をしております。
したがって、実は、現実に、まあ余り時間もないかもしれませんけれども、先ほど挙げた岡谷鋼機という商社では、今年から、女性については今まで事務職だったのを事務職の採用をなくしました。で、新卒なんですね、大卒新卒でもって女性を求めると。今回十一人、事務契約社員というのは三年間、一応その三年間のうちで個別に何年間か決めると、そして最高五年、それ以上は更新しないと、こういう新たな募集を出しております。そして今回、四月に入った十一名、全員女性です。
ですから、やっぱりそういう形での男女差別が続いていくときに、これはやはり間接差別の方にぴしっと当たるんではないか。それを規定の仕方と、そしてやっぱり限定列挙を外していくというふうに考えておりますけれども、そんなところで本当に平等への進め方をやって、行っていただきたいなというふうに思っています。
○福島みずほ君
この委員会でも、均等待遇とは何か、同一価値労働同一賃金とは何かという議論があります。丸子警報器事件や京ガス事件のように、裁判所は同一価値労働同一賃金的なことの判断は既に示しているわけで、それは一つの価値基準を示しており、かつEUや世界的には均等待遇ということが言われているわけですが、均等待遇、同一価値労働同一賃金をこう実現すべき、あるいはこう考えるべきということについて、山田参考人、お願いいたします。
○参考人(山田省三君)
先ほども同一価値労働同一賃金原則が我が国にあるかどうかという議論がされましたけれども、これは当初、昭和二十二年の労基法の四条の中に最初そういう表題があったということで、これが立法化でなくなったことが否定説の根拠にもなっているんですけれども、その後、日本はILO百号条約を批准したということで、そのときに国会で、そういう意味で批准に伴って労基法四条を改正することになるんですけれども、改正する必要はない、既にその四条に含まれているという答弁が国会でされているわけで、そういう意味で必ずしも、あくまで男女間ですけれども、男女間でその同一価値労働同一賃金原則はあると言えるんではないかと思いますね。
それを具体化する場合、先ほども賃金の御質問がありましたけれども、今、そういう意味で、労働基準法四条は刑罰法規ですから、なかなかそこで、もちろん女性であること、差別を刑罰をもって禁止する労基法四条はそれでよろしいんですけれども、例えば同一価値労働とか同一労働という微妙な判断を刑罰をもって労基法四条で規制するというのは非常に困難があると思うんですね。その意味で、労基法四条を残した上で、もっとそういった、御指摘ありましたように、均等法に同一価値労働同一賃金原則を入れることによって、そういった同一労働とか同一価値に係る賃金差別は均等法で処理する、明確な差別については労基法四条でするということは理論的にもあり得ないことでありまして、例えばイギリスでは性差別禁止法と同一賃金法二つがありまして、これは御承知のように、契約に基づく差別は、賃金差別は同一賃金法で、それ以外のものは性差別禁止法ということで、両方賃金規定が入っているんですね。その意味で、労基法にあるからその賃金規定が、差別の禁止規定が均等法に不要であるということにはならない。そういう意味でその役割分担なり違うということになりますし、あるいはその均等法に基づく賃金差別についても処理する条文が存在しないことになりますね。そういう意味で、基本的に労基法だけではなくて均等法にも同一価値労働同一賃金原則を入れることが賃金に関する差別の是正として必要最小限のものではないかと考えております。
○福島みずほ君
間接差別ということが非常に最大のテーマとなって議論されておりますが、厚生労働省は間接差別が争われた裁判例はないと答弁しています。山田参考人、そうなんでしょうか。
○参考人(山田省三君)
これについては、そういう見解もありますけれども、いわゆる世帯主条項とそれから転勤要件が争われた三陽物産事件の判決をどう読むかということでありまして、確かにそれが実質的には性にかかわらない条件であるけれども、使用者がそういう差別意図を持って制定して運用をしたということから、間接差別ではないという議論もありますけれども、それが完全に間接差別を否定したかというと、間接差別への一つの佳境を示した議論であることを評価することもできますし、先ほどの御指摘にあった京ガス事件におけるのは同一価値労働同一賃金原則の一部を肯定したと言えますし、あるいは先ほど御紹介のあった丸子警報器事件判決も、同一価値労働同一賃金原則そのものでないにしても、その同一価値労働同一賃金原則の根底にある均等待遇の理念というのがこれが公序になるんだという判断を示されていますので、そういう意味で、御質問ありました、全く我が国の裁判例において間接差別や同一価値労働同一賃金原則等がないというのは正しい理解ではないんではないかと考えております。
○福島みずほ君
西村参考人、具体例をいろいろ発言をしてくださり、裁判の中での悩みを話してくだすってありがとうございました。
簡単に、こういうふうに均等法、本当は改正してほしいと、あれば最後に一言お願いいたします。
○参考人(西村かつみ君)
発言の中で申し上げましたけれども、やはり間接差別の定義をきっちりしていただく、そして基本的には間接差別は禁止であると、あと、やはり例としてこういうものがあるということは指針に書いていただく、もうそれしかないんじゃないかと思っておりますが。
○福島みずほ君
終わります。
ありがとうございました。
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